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これから浮上する国、沈む国…世界経済のからくり

ワールドエコノミー研究会

2012年02月03日 公開 2021年08月10日 更新

ユーロ圏で不穏な経済状況が続いている。これは世界大恐慌の始まりなのか? 長引く不況から抜け出せず財政破綻も懸念される日本。経済がよくないのに、なぜ超円高なのか?……

いまや経済問題を理解するポイントは連鎖。世界の経済は国境を越え、瞬く間に相互に影響を及ぼし合う。グローバル時代のヒト・モノ・カネの流れと相互連関をつかむことが、世界経済を理解する鍵なのである。

ワールドエコノミー研究会が相互に関連し、互いに影響を及ぼし合っているグローバル経済のしくみを図解でわかりやすく解説。日頃の素朴な疑問もこれでスッキリ解決!

※本稿は、ワールドエコノミー研究会著『[図解]一目でわかる!世界経済のからくり』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

中国のつぎに「世界の工場」となるのはどこの国?

中国から東南アジアへ、東欧から北アフリカへ

先進国のメーカーの多くは、人件費や地代の安い途上国に生産拠点を置き、そこで製品をつくって世界に売るという戦略をとる。1990年代以降、世界のメーカーが生産基地を置いたのはアジア、とくに「世界の工場」と呼ばれる中国だった。

ところが近年、そのメーカーが生産拠点を中国から移動させている。経済成長を続ける中国では、工場で働く従業員の賃金が上昇しているのだ。また、人民元の切り上げが行なわれたり、インフレが起こったため、中国に工場を置くうまみが薄れてきている。その結果、中国よりもさらに賃金が安い東南アジアに工場を移す企業が増えている。

タイには自動車メーカーが集まってきている。安価で質の高い労働力に加え、タイ政府による税制優遇政策が多くのメーカーを引きつけ、タイはいまでは「アジアのデトロイト」と呼ばれる自動車生産拠点となった。

ベトナムにも自動車、家電、衣料品など多数のメーカーが工場を移転させている。アメリカの大手スポーツ用品メーカー、ナイキの世界最大の生産拠点は、2011年に中国からベトナムに移った。また、日本のユニクロ、スウェーデンのH&Mといった衣料品メーカーはバングラデシュへ進出している。

いっぽうヨーロッパでは、近年まで新たにEUに加盟した東欧諸国に生産拠点が置かれる傾向にあった。しかし人件費の上昇にともない、最近は南東欧やトルコ、北アフリカなどへ企業の進出が続いている。たとえば北アフリカのモロッコは、ヨーロッパから地中海をはさんですぐ向こう側にあり、距離が近い。そのうえ、EUとの連合協定によってEU向けの輸出は関税ゼロという利点があるので、急速に注目が集まっている。

アメリカ大陸では、アメリカのメーカーがメキシコに工場をつくる動きが活発化している。その背景には、やはりFTAがある。メキシコはNAFTAに参加しているため、アメリカ、カナダへの輸出に関税がかからないのだ。さらに、メキシコはEUともFTAを結んでいるので、ヨーロッパ市場へ輸出する際にも恩恵を受けられる。

どのメーカーもいかに安く生産し、いかに高く売るかという戦略にもとづいて動いている。こうした戦略が「世界の工場」の地図を塗り替えつつあるのだ。

 

次にとって代わる国、代わられる国

2010年、中国はアメリカにつぐ世界第2位の経済大国になった。中国だけでなく、インド、ブラジル、ロシア、南アフリカなどの成長も目覚ましく、世界経済における新興国の役割が年々重要になってきている。

一方、これまで世界経済を引っ張ってきたアメリカ、ヨーロッパ、日本の3極の先行きは不透明である。

世界のヒト・モノ・カネの流れが変わっていくなか、次にくる国はどこなのか。注目すべき21カ国を検証した。

アメリカ・栄光は風前の灯火に……「日本化」が進む超大国
ドイツ・驚異的な輸出力を誇るヨーロッパ一の経済大国 
フランス・経済縮小の原因となる少子化問題を解決した成熟国
イギリス・金融危機以降、低迷が続くかつての世界経済覇権国
スペイン・ユーロ消滅を招く恐れのあるもうひとつの重債務国
デンマーク・25%もの消費税を課しながら「世界一幸せ」でいられる国
ロシア・石油と天然ガスで大国の座に返り咲いた北の資源大国
中国・日本を抜き去り、世界2位に躍り出た新経済大国
インド・教育の充実、英語力、若さが強みのアジアの巨頭
韓国・新興国や途上国への影響力を増しているアジアの虎
タイ・自動車の生産拠点となった「アジアのデトロイト」
ベトナム・成長は著しいものの、高いインフレ率に悩む社会主義国
インドネシア・消費力旺盛な若者が経済を担う東南アジアの雄
シンガポール・巧みな国家戦略で経済大国に成長した熱帯の極小国
トルコ・政治・経済の十字路に位置する未来の経済大国
メキシコ・40年後、世界5位の経済大国になるラテンアメリカの旗手
カタール・世界一の経済成長率を誇り、W杯を開催する中東の新興国
ブラジル・五輪、W杯を起爆剤にさらなる成長をめざす新興大国
南アフリカ・「ブラック・ダイヤモンド」が牽引するアフリカのリーダー
ボツワナ・ダイヤモンドを基盤に飛躍するアフリカ屈指の成長国
日本・復活の日はいつ!? すっかり成長がとまったアジアの盟主

(ここでは、少子化、消費税、成長余力の観点から3カ国を紹介します。その他の国々については 『[図解]一目でわかる!世界経済のからくり』 でご覧ください。:WEB編集担当)

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