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ハーバード大学で実践されている 「聞き手の心のつかみ方」

ジェイ・ハインリックス(訳:多賀谷正子)

2018年07月19日 公開 2024年12月16日 更新

<<上司を説得したい、部下をうまく動かしたい、妻の機嫌を損ねずに話したい……ビジネスだけでなく、人生のあらゆるときに役立つ最強の伝える技術があります。それが、「レトリック」。

レトリックは、あのハーバード大学をはじめ、欧米では最近注目が集まっています。アリストテレスからオバマまで、2000年にわたって世界のリーダーが使ってきた技術とはどんなものなのか。

ハーバード大学の必読図書トップ10に選出された『THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術』 の著者が、「聞き手の心のつかみ方」を紹介する。>>

 

オバマとアリストテレスの共通点

偉大な雄弁家はもういない、と思っている人は、2004年7月27日に行われたスピーチを見てみるといい。その日、ひとりの男が、まさに歴史の流れを変えるようなスピーチをした。

「バラク、誰だって?」聞き慣れない名前の候補者が民主党党大会の基調講演者として演壇に上がったとき、誰もがこう言った。

彼が聴衆に向かって手を振っているあいだ、テレビのレポーターたちはカンニング・ペーパーを使って、オバマのプロフィールを読みあげた。

比較的無名のスピーチが大統領の座へとつながったのは、1860年以来のことだろう。

このときは、イリノイ州出身のエイブラハム・リンカーンという田舎弁護士が、有名なクーパー・ユニオン演説で、ニューヨークのエリートぞろいの聴衆を魅了した。

リンカーンの聴衆は比較的数が少なかったものの、「この男に大統領にふさわしい知識と経験があるのか」と誰もがいぶかしんでいた。

リンカーンには、そんな聴衆を説得する必要があった。オバマも、自分が政界のロック・スターであることを証明しなければならなかった。そして両者とも、見事に成功したのである。

スピーチのおかげでオバマの著書『マイ・ドリーム』は瞬く間にベストセラーとなり、何千人というオバマの信奉者が生まれた。

彼は一夜にして、政界の新星から大統領候補者になったのだ。次に彼が党大会でスピーチを行ったのは2008年、民主党の指名を受諾したときだった。

当時、私はオバマが行った初めてのスピーチをわざわざ見ようとは思わなかった。だが、これは間違いだった。

彼はレトリックの力がどれほど大きいものかを示してくれた。ここでは、オバマがどうやって何百万人もの人を魅了したのか、そしてどうやって自分をリーダーとしてふさわしい人物に見せたのかを見てみよう。

アリストテレスは、政治的なスピーチでは審議のレトリック(未来形を使い、何が聴衆にとっての利益となるのかを訴え、選択を促す)を使うべきだと語る。

だが、人々の心をひとつにするためのスピーチには、価値観にかかわる演示のレトリックを使うといい。

演示のレトリックをよく知っていれば、スピーチを聞くときに何に気をつければいいか、何を批判すればいいかわかるだけでなく、あなたももっと雄弁になることができる。

このふたりのことをどう思おうと、彼らから学ぶものは多い。ふたりとも、古代から受け継がれてきたレトリックの名手である。間違いなく、レトリックは今日でも効果的なのだ。

(次ページ:オバマはなぜ聴衆の心をとらえたのか)

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オバマはなぜ聴衆の心をとらえたのか

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