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生き方

シンプルなデザインは、空間や環境が導く最適解から生まれる

深澤直人(プロダクトデザイナー)

2018年08月16日 公開 2021年05月11日 更新

<< デザインとは「姿を与えること」だという深澤直人氏。彫刻家になりたかった幼少期、イサム・ノグチに憧れた青年期を経て、世界的なプロジェクトを手がけるプロダクトデザイナーである深澤氏の仕事に流れる一本の線とは、どのようなものなのだろうか。最新の作品集『Naoto Fukasawa: Embodiment』に触れながらお話をうかがった。>>

 

「あの人の姿」とは言うが、「あの人の形」とは言わない。"姿"を与えることがデザイン

作品集のタイトルにある「embodiment」は、生態心理学、アフォーダンスを通じて知った言葉で、音の響きがいいなと思ったんですけど、いい和訳がない。「具体化」とかそういうことになるんでしょうけど、しっくりこないんですよね。

自分なりに解釈したら、「姿」。「姿を与えること」だなと。

僕のやっていることは、姿を与えること、「そこに存在するであろう見えていないもの」に姿を与えるのが自分の仕事だな、と思いました。それは彫刻ともつながりますね。

形ではない、それは姿。「あの人の姿」とは言っても、「あの人の形」とは言わないですよね。姿っていうのは、アンビエンス、つまり周囲の環境、まわりに生まれる空気までも含んでいるわけです。この姿という言葉も、英語に訳すのが難しいんですが。

先日、マルニ木工の発表会で、友人のデザイナー、ジャスパー・モリソンの本を訳した日本人の女性とたまたま知り合ったので、その人に「embodiment」ってどうやって訳すのがいいですかと聞いたんですよ。

そしたらあとからメールで、「仏師が木の中にもう彫る形が見えていて、それを彫っていくっていうような意味じゃないですか」と、すごくいい返事が来るわけです。そうか、その感じだ!と膝を叩きました。

イサム・ノグチも、いきなり石を削るわけです、その中に何かこう、姿が見えている。すでにあるものの中を探していくみたいな、外側が内側を決めているみたいな感じがあって、僕もそういうふうにいつもデザインをしています。

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実は20代の頃、造形的で複雑なデザインを好んだ

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