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しつこい頭痛が治らない!そんな人は「噛み合わせ」を見直そう

領木治良(歯科医師、りょうきデンタルオフィス院長)

2018年11月12日 公開 2023年09月07日 更新

現代人は無意識に歯を食いしばっている!?

マウスピースによる頭痛治療の成果は、数字で表れていきました。

慢性頭痛で何年も悩んでいた患者さんが、私の製作したマウスピースを付けることで、短期間に症状が改善されてゆき、現在では500例弱ほどの治療実績が積み上がってきています。

これを受けて、私は次のような、頭痛発生のメカニズムに考えが至りました。

慢性的に歯を噛みしめる人の頭部の筋肉は、長時間緊張し続け、その過度の負担が筋肉へダメージを与えます。それにより、筋肉を包む膜に炎症を引き起こします。

その損傷部分は、対処しない限り緩むことなく周囲の血管を圧迫し続けます。当然、血液は流れにくくなり、局所的な酸素欠乏の状態を引き起こします。すると、血液中から“発痛物質”という痛みの素が生み出される。その結果、筋肉が過緊張している部位だけでなく、その周辺の広い範囲に激しい痛みを発生させてしまい、頭痛につながっているというわけです。

この「筋・筋膜性疼痛症候群」こそが、頭痛を引き起す原因となっている。つまり、歯の噛みしめ・食いしばりこそが、慢性頭痛の真の犯人なのでは、と私は考えるようになったのです。

冒頭で紹介した頑張り屋の女性の患者さんに代表されるように、現代は仕事などのストレスにより、無意識に歯を噛みしめ食いしばっている人が非常に多く存在します。とりわけ、パソコンなしでは仕事が成り立たない、スマホが片時も手放せない、そんな人たちが。

 これは私の仮説ですが、おそらく、歯を噛むことで、無自覚なある種の安心感を得ているのではないでしょうか。それはあたかも、ついほおづえをついたり、座るとすぐ脚を組んだりするように。

無意識の行為ですから、いつ歯を噛みしめるかは人それぞれです。睡眠中だけの人もいれば、昼間仕事中に噛みしめてしまう人もいる。しかし、共通するのは「自分で止めるのが難しい」ということです。なぜなら無意識下の行為ですから。意識して"歯を噛みしめない"状態を保つのは、意外と至難の技なのです。

 

「噛み合わせが良い」ことがむしろマイナスに?

歯をくいしばる人は、"噛みあわせが良すぎること"もその原因になったりします。

歯と歯を合わせた時に、ガチッとハマる状態になるからこそ、ググッと圧をかけて、食いしばってしまいやすいのです。

そこで、私が製作するマウスピースでは、逆の発想をします。

どこを噛んでも、上の歯と下の歯の凸と凹がガチンとはまらず、スーっと抜けてしまうような状態を人工的に作れば、ここぞという位置で力の入れようがなく、食いしばることができない。誤解を恐れずに言えば、あえて噛み合わせを「いい意味で不安定にする」ようなマウスピースで矯正するというわけです。これをつけてもらうことで、筋肉の緊張をほぐし、頭痛を緩和・消退させることを目指しています。

そうすることで、患者さんが歯を食いしばろうとしても、小刻みな脱力を繰り返し、“スルリ、スルリ”と力がうまく逃げていく。力が逃げてしまうので噛みしめることができない、そんなイメージです。

「頭痛を治すために歯医者に行く」と聞いてもピンと来ない人も多いでしょう。実際、私の患者さんでも頭痛を治す目的で来院される人は少数派です。

ですから、実際に歯を見て、こちらのほうから「もしかして頭痛持ちじゃないですか?」と聞いて治療に入っていくパターンもあります。まさか歯科医院に来て頭痛のことを聞かれるとは思っていませんから、最初はどの方もポカンとしていますけどね(笑)。

しかし、その成果は着実に表れています。

なかなか頭痛が去らない、もしや脳の内部の血管に異常がと心配し脳外科でつぶさに調べてもらっても何も異常なし、でもやはり頭痛はしょっちゅう。そんな頭痛に悩まされている方がいらっしゃれば、一度、ご自身の歯の噛みしめ・食いしばりを疑ってみられることをお勧めします。

著者紹介

領木治良(りょうき・はるよし)

歯科医師、りょうきデンタルオフィス院長

慢性頭痛治療も手掛ける歯科医師。りょうきデンタルオフィス院長。1994年、鹿児島大学歯学部卒業。2001年まで東京都中央区、千代田区、渋谷区の各歯科医院に勤務する。2002年に「りょうきデンタルオフィス」を開院。同年から慢性頭痛に対する治療を手がけはじめる。

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