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なぜ「残業を強制する上司」は"言葉"を知らないのか

佐々木常夫(元東レ経営研究所社長)

2019年02月20日 公開 2022年07月14日 更新

人を動かすために大切な2つのこと

では、人を動かすには何が必要でしょうか。

それは「信頼」と「コミュニケーション」です。この両輪がなければ、リーダーとしてチームに影響を与え、部下を率いて成果を出すことはできません。

丁寧なコミュニケーションを重ね、相手との間に信頼を築けば、労せずして相手を動かせます。部下に「あの人が言うなら、その通りにしよう」と思ってもらえるからです。

反対に、同じことを言っているのに「あの人の言う通りにして大丈夫だろうか」と部下に懸念を持たれ、なかなか動いてもらえない上司もいます。これは上司と部下の間に信頼がないことが原因です。

しかし、他人と信頼関係を築くのは、口で言うほど簡単ではありません。それに、人は本来、そう簡単に動くものでもありません。

私自身が部下だった頃、長時間労働を強制する上司に反発していたので、そのことはよく理解できます。当時の上司から見れば、私が“動かない部下”だったわけです。

しかし、こちらとしては上司の言うことに納得がいかないから動かないだけのこと。だから私は、「管理職に必要なのは、相手を納得させるだけの言葉を持つことだ」と早い時点で気づくことができました。
 

「言葉」と「行動」を積み重ねるしかない

管理職になった私は、新しい部署に異動するたび、「仕事の進め方10か条」という文書を部下に配るのが習慣となりました。私の効率や生産性を重視し、ムダな仕事や残業は一切しないという信念を言葉にしたものです。さらに「私は皆さんを労働時間ではなく、結果で評価します」と明言しました。

加えて、言葉で伝えたことを行動でも示しました。部下たちの仕事のムダを徹底して洗い出し、業務量を半減して、残業しなくても成果を出せる仕組みを作ったのです。

部下たちにすれば、早く帰れる上に高い成果を出せて、それをきちんと評価してもらえるのです。「この上司の言う通りにすれば良いことがある」と納得し、私を信頼して動いてくれるようになりました。

「人を動かす」とは、上の者が下の者を権力や強制力で無理に従わせることではありません。相手が、みずから進んで動きたくなるよう働きかけることです。

そのためには、リーダーが日頃から部下を納得させ、信頼を生み出すだけの「言葉」と「行動」を積み重ねることが不可欠です。

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