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脳の成長サイクルを促す鍵は、「趣味」を楽しむこと

瀧靖之(東北大学教授)

2019年03月27日 公開 2023年09月05日 更新

大人が子供より勉強を楽しめる理由

子供の頃は、勉強も習い事も「やらされ感」の強いものだったはず。知識の内容も、その背景を考えたりせず、丸暗記的な学び方が多かったはずです。実際、子供の脳はそうした機械的な記憶力に長けていると言われています。

大人はその逆。「丸暗記力」は子供の頃より落ちますが、「連合記憶」=関連する他の知識に紐づけて覚えるのが上手になると考えられるのです。

ですから機械的に覚えるのではなく、ストーリー化させたり、馴染みのあるイメージにつなげたりと、関連づけを意識するのがコツと言えます。

大人が連合記憶に長けているのは、子供より人生経験が豊富だからです。これは、大人の何よりの強みです。学ぶ内容を「味わう」ことができます。

歴史上の事件の重大性、英語の長文のメッセージ、音楽の旋律の響き。それらの意味を感じ取る力があるぶん、学ぶことが楽しいものになり得るのです。

この「学ぶ楽しさ」を感じること、すなわち知的好奇心を持つことが、脳を成長させるための最大の秘訣です。

記憶を司る「海馬」の隣には、感情を司る「扁桃体」があり、両者は密に連携すると言われています。楽しい感情を味わいながら経験したことは、記憶に定着しやすいと思われるのです。

楽しみながら学ぶことは、そう難しくありません。会社に言われてしぶしぶ英語を勉強する場合でさえ「話せるようになったらこんなことができる」とイメージすれば楽しくなりますし、「昨日よりできていること」を確認するだけでもポジティブになれるでしょう。

その要領で、少しずつ知識を蓄積すると、徐々に記憶力自体も上がります。その喜びはさらに知的好奇心を刺激し、別分野への興味の広がりをも促進します。この好循環こそ、脳の成長サイクルなのです。

一方で、「休日も仕事のことで頭がいっぱいで、興味関心のあることに注意を向ける余裕がない」方もいるでしょう。

しかし、過度なプレッシャーは、ストレスとなって海馬で行なわれる「神経新生」=神経細胞が新たに生まれることを阻害する可能性が高い。学習能力が落ちるのみならず、認知症のリスク要因にもなり得るのです。

といっても、オンとオフの切り替えがうまくできない方も多いはず。そこでお勧めなのが、「脳のアイドリング」です。脳の9割を興味関心のあることに向け、1割だけ仕事のことを考えます。

このとき、仕事の内容を細分化してTODOリストに落とし込むことが重要です。仕事に対する漠然とした不安が、頭の中で増大してストレスになっていくからです。ストレス要因とその対処法をハッキリさせれば、自ずと興味関心のあることに集中できるでしょう。

もちろん、ストレスを忘れ去るほどの楽しい趣味があれば、それに越したことはありません。

 

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好奇心を育てる趣味の見つけ方

著者紹介

瀧靖之(たき・やすゆき)

東北大学教授

1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。脳のMRI画像データベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを研究。これまでに解析した画像は16万人以上。新聞・テレビ出演、一般向け著書も多数。近著『「脳を本気」にさせる究極の勉強法』(文響社)。

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