今なお苦しむ「氷河期世代」を生み出した“真犯人”
2019年05月30日 公開 2024年12月16日 更新
<<「物価が下がるのはよいこと」と考えがちな世間の風潮に対して、デフレで物価が下がることの大いなるデメリットを、元日銀副総裁の岩田規久男氏が著書『なぜデフレを放置してはいけないか』にて指摘している。
同書ではいわゆる「就職氷河期」がデフレによって生み出されたと強く主張している。その一節を紹介する。>>
※本稿は岩田規久男著『ぜデフレを放置してはいけないか 人手不足経済で甦るアベノミクス』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです
デフレは失業の増加をもたらす
デフレの脅威の最たるものは、失業者の増加をもたらすことです。
図表2─1は、1980年から2018年までの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比、完全失業率および有効求人倍率の推移を示したものです。この図表での1992年から1999年のディス・インフレ期とは、低水準の消費者物価の前年比が0%に向かって低下し続けた期間を示しています。
1992年からのディス・インフレ(低い水準でのインフレ率の低下)を見れば、やがて来るデフレを予想すべきでした。
図表2─1から、消費者物価が低いプラスの水準からさらに低い0%に向かって低下するというディス・インフレが起きると、失業率が上昇する一方で、有効求人倍率が低下することがわかります。消費者物価が0%以下になり、物価が下がり続けるデフレに陥ると、失業率はさらに上昇し、有効求人倍率は低迷します。
2013年4月から日銀が量的・質的金融緩和政策を開始すると、消費者物価は上昇に転じ、それにつれて失業率は低下し続け、有効求人倍率は上昇し続けています。
ただし、2016年は平均すると消費者物価はマイナス0.3%と、0%以下になっています。これは2014年度の消費税増税後の消費の弱さと原油価格の急落が影響していますが、一時的にインフレ率がマイナスになっただけで、デフレに戻ったわけではなく、デフレ脱却への動きは続いていると見るべきです。
図表2─2は、1990年から2012年までの暦年ベースの消費者物価の前年比と完全失業率の関係を示したグラフです。この図表から、消費者物価の前年比が低下するにつれて、失業率が上昇することがわかります。
図表2─1を見ると、1992年には、消費者物価の前年比は2.2%で、失業率も2.2%でした。その後、消費者物価の前年比が低下するにつれて失業率は上昇し、1995年には、消費者物価の前年比0%の下で、失業率は3.2%まで上昇しています。
2000年には、消費者物価前年比はマイナス0.43%まで低下し、失業率は4.7%へと、92年よりも倍以上に上昇しました。2002年はマイナス0.9%まで物価下落が進み、失業率は5.4%と5%台前半まで上昇しています。
1993年度卒から2005年度卒の新卒就職市場は最悪で、就職氷河期と呼ばれます。とくに2000年度卒は大卒の求人倍率が0.99倍と一を下回り、超就職氷河期と呼ばれます。