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「スマート・エイジング 」で高齢者の消費変化に対応する~シニアビジネス成功の鍵とは?

村田裕之(東北大学特任教授・村田アソシエイツ代表)

2019年09月02日 公開 2023年10月04日 更新

フィットネスを美容から「30分健康体操」にシフト

例えば健康分野での成功事例としては、一回30分の女性専用フィットネス「カーブス」が挙げられます。元々アメリカで始まったサービスで、日本で事業を開始してから13年が経ち、1921店舗(2018年9月11日現在)、会員数が約83万人まで広がりました。おそらく2019年中には、会員数が100万人に達するでしょう。

この「カーブス」の成功の理由は、大きく分けて二つあります。

一つ目が、日本の中高年女性のニーズに応えるため、痒いところにまで手が届く工夫を凝らしてきたこと。

例えば日本の中高年女性は主婦が多数で、日頃あまり外に出る機会がない人も多いので、フィットネスで体を動かす30分間だけ心が解放されるような場をつくることを心がけています。当初は「女性だけの30分フィットネス」というキャッチコピーを使っていましたが、後に「女性だけの30分健康体操教室」に変えました。

ジムでは、会員の名前を呼ぶのも名字ではなくファーストネーム(下の名前)。エッセイ大賞をはじめ各種のコンテストやコンペを頻繁に行ない、会員のモチベーションの向上を図っています。

そして二つ目の理由が、日本人女性の健康リテラシー(理解力)の向上や健康意識の高まりを、うまくとらえたことです。一般のフィットネスクラブは、痩せたいとかスタイルをよくしたいという女性が利用することが多い一方、「カーブス」には「健康になりたい」とか「要介護状態になりたくない」「足の痛みを治したい」という女性たちが数多く訪れています。

最近特に注目されるのが、要介護認定を受けて介護サービスを利用した人が、そのサービスをやめて「カーブス」を訪れ、健康を取り戻すケースが増えていること。ある88歳の女性は、7年前には腰が大きく曲がり、「要介護2」の認定を受けてデイサービスに通っていました。ところが体の状態が一向に改善しないため、「カーブス」の会員である娘さんの勧めで入会し、筋トレを始めたところ、背中をしゃんと伸ばしてトレーニングをこなせるまでになったのです。

「カーブス」会員の中には、身近に要介護状態の人がいる方も多く、彼女たちは「自分は要介護状態にならないようにしよう」という予防意識を持っています。要するに、介護予防が「自分事」になっているわけですが、こうした傾向は、日本でサービスを開始した13年前頃にはあまり見られませんでした。

その意味で、「カーブス」が成功した大きな理由は、時代の変化の波にうまく乗ったことにあると考えられます。これは新規事業を行なう際に重要なことで、早すぎても駄目ですし、遅ければ厳しい競争にさらされます。その点、「カーブス」は絶妙のタイミングで、これまでにないサービスを立ち上げたので、先行者利益を得たのです。

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