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定年後こそ挑戦!「シニア起業」は「ゆる起業」でいこう

片桐実央(銀座セカンドライフ株式会社代表取締役)

2019年09月18日 公開 2023年10月04日 更新


 

片桐実央(銀座セカンドライフ株式会社代表取締役)
かたぎり・みお*1980年千葉県生まれ。学習院大学法学部卒業後、2003年花王株式会社に入社。法務・コンプライアンス部門で会社設立、契約書作成等、法律の専門家として活躍。’06年大和証券SMBC株式会社引受審査部に入社し、IPO支援を経験した後、’08年7月にシニアを対象とした起業支援事業を行なう銀座セカンドライフ株式会社を設立。現在、レンタルオフィス「アントレサロン」を12店舗運営、毎月100名集まる起業家交流会を開催し、会員は7000名を超える。行政書士。一級FP技能士。

 

長寿社会のセカンドライフに「やりがい」を生み出す

「人生100年時代」には定年後に40年前後のセカンドライフが存在することになる。「働けるうちはいつまでも働きたい」と考えるシニアは少なくないが、なかでも近年は再雇用や再就職ではなく、これまでに培ってきた経験や人脈を活かして、やりがいの持てる仕事がしたいと、起業を選ぶ人が増えているという。若くしてみずからも起業し、シニア起業の支援事業に取り組んでいる銀座セカンドライフ代表の片桐実央氏に、その事業展開や、シニア起業ならではの成功のポイントなどをうかがった。

取材・構成:平林謙治
写真撮影:長谷川博一
 

お金はあとからついてくる――“ゆる起業”のススメ

そもそもシニア起業の実態は、一般的な起業とどう違うのでしょうか。長く支援に携わってきた立場から、その特徴や傾向をご紹介します。

第一は「経験を活かす」人が多いことです。前職での経験を何らかのかたちで活かして起業する人が全体の8割を占めるというデータがありますが、当社のお客様も例外ではなく、リスクの大きい未経験の業種・業界に飛び込んで成功している方はほとんどいらっしゃいません。シニア世代にとって、長い職業人生に培われた豊富な実績やスキル、人脈などは、何物にも代えがたい資産。活用しない手はないということでしょう。

第二の特徴として挙げられるのが、「一人で起業する」こと。前職での同僚や気の合う友人と組む例もありますが、9割以上が一人起業を選んでいます。理由としては、やはり「人を雇う」ことへの抵抗感が強いようですね。自分が元気で働けるうちはいいけれど、いずれ事業を畳まざるをえなくなった時、被雇用者の人生まで狂わすのではないか、と心配される方が結構いらっしゃいます。また、誰に気兼ねすることなく、自分のペースで働き続けられるのも、一人起業ならではのメリットでしょう。当社のレンタルオフィスを利用されているお客様を見ても、例えば朝の出社はラッシュアワーを避けて、ゆったりとお越しになる方が多いようです。長年苦労した通勤地獄からようやく解放されたのですから、それくらいしてもバチは当たりませんよね(笑)。

さらにもう一つ、シニア起業に顕著な傾向があります。それは「収入よりもやりがいを重視する」こと。少し古いデータになりますが、日本政策金融公庫総合研究所がまとめた2012年度「新規開業実態調査」によると、五十五歳以上で起業した人の動機は「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」「社会の役に立つ仕事がしたかった」「年齢や性別に関係なく仕事がしたかった」がトップ3に挙がっています。一方、収入に対しては、他の年齢層に比べて「家計を維持できるだけの収入があれば十分だ」と考える人が多く、「できるだけ多くの収入を得たい」と考える人は少ない、という結果が出ています。

シニア世代の多くが起業に求める価値は、お金ではありません。好きなことや昔からの夢に打ち込める楽しさ、自分を活かしていつまでも働き続けられる喜び、人に感謝されて社会に貢献できる充実感――「やりがいの再発見」こそがシニア起業の醍醐味だといえるでしょう。

実際、相談に来られたお客様に、「お金はあとからついてくるものと考えましょう」とお伝えすると、皆さん一様に安堵したような、前向きな表情になります。それは、何かやってみたいと思う半面、「起業」に対して、どこかギラギラしたような先入観から躊躇したり、「自分には大それたことだ」と勝手にハードルを上げて気負ったりしているからかもしれません。そうではなく、50代、60代からの起業はもっと身近で、「ゆるり」としたものなんですね。自分の幸せや楽しさのために、身の丈の範囲で仕事をして、適度な収入をいただく――そういう姿勢で始める起業を、私は「ゆる起業」と名づけ、充実したセカンドライフの選択肢としてお勧めしています。

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答えは自分の中にある――起業アイデアの探し方

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