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安倍政権が消費増税を断行した“本当の理由”

荻原博子(経済ジャーナリスト)

2019年10月17日 公開 2024年12月16日 更新

10月1日に消費増税が実施され、「消費税10%」時代がついに到来した。消費増税は過去多くの反対があったにも関わらず、予定通りの増税となった。背景には政治への諦観が見える、と経済ジャーナリストの荻原博子氏は指摘する。10月の消費増税施行に至った背景を考察した。

※本稿は『Voice』2019年11月号、荻原博子氏の「消費税10%時代の暮らしの守り方」を一部抜粋、編集したものです。

 

選挙の無風がもたらした10%引き上げ

この10月1日に、いよいよ消費税が10%に引き上げられました。「本当に増税されるのかな?」と半信半疑のまま、気が付いたら「消費税10%時代」を迎えたという方も少なくないでしょう。

私自身、安倍政権は消費税を上げられないと考えていました。根拠は選挙です。有権者に明確な負担増を強いる消費増税が、選挙戦を戦ううえで大きなディスアドバンテージになることは言うまでもないでしょう。

たとえば、2018年5月に行なわれたマレーシアの国政選挙では、マハティール首相が「消費税ゼロ」を公約に掲げて勝利しました。最近のマレーシアは経済成長率が低下しており、消費の減少が原因だと考えられていました。

とりわけ、2015年にナジブ前政権が導入した物品・サービス税(日本の消費税に相当)に対して国民が向けた目は厳しく、だからこそマハティール首相は事実上の消費税廃止を訴えて選挙に勝ち、同年6月に実行に移したのです(その後、代わりに売上・サービス税を復活)。

安倍首相は、昨年11月にマハティール首相と会っています。私はその動きもふまえたうえで、「消費税は上げられない」とみたわけです。

安倍政権には選挙しか頭のなかになく、危ない橋を渡らないだろう、と。同様に考えていた識者は多かったはずです。

そんな大方の予測とは裏腹に消費税が引き上げられたのは、ひとえに7月の参院選があまりにも「無風」であったからにほかなりません。参院選が本格化する前から、今回の選挙は与党が盤石だと報じられていました。

また、消費増税に関する世論調査は、賛成派と反対派がおおよそ5分5分に分かれていたとはいえ、もはや国民のあいだでは大きな関心事ではなかったかもしれません。

選挙前のニュースを思い返してください。消費増税を論点とするメディアは少なく、むしろ「老後2000万円問題」のほうがインパクトは大きかった。そうした世情に鑑みたうえで、現政権は消費増税に関しては強行できると判断したのです。

一方の国民側は、投票率が48.80%と24年ぶりに50%を割ったように、消費増税のみならず政治に対しての「諦観」が蔓延しています。

野党があの体たらくなのは確かですが、与党はその野党を批判するばかりで矛先をずらしている。選挙で「NHKから国民を守る党」が議席を確保したのは、そんな与野党の混迷の表れでしょう。

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増税はやはり愚策

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