写真:永井浩
<<生活資金、老後資金を貯蓄するためには投資すべきと喧伝されるなか、経済ジャーナリストの荻原博子氏はその風潮に対して「今は投資すべきではない」と真っ向から反論する。
しかしながら、荻原氏は投資そのものを全面的に否定しているわけではない。投資をには、ある「条件」が必要で、それを満たさない人はすぐに手を引くべきと主張している。「それでも投資をしたい人」に求められる要素とは?>>
※本稿は『Voice』2018年5月号、荻原博子氏の「あなたのお金が危ない」を一部、抜粋したものです
簡単にお金を預けてはいけない
「借金をしてでも、いまのうちに投資をすべきだと勧められたのですが、本当でしょうか?」
先日、あるインターネット番組の生放送に出演したとき、視聴者から寄せられた質問です。私は「少なくとも、日銀がデフレ脱却を宣言してからにすべきでしょう。投資はそれからでも十分に間に合います」とお答えしました。
放送中に同様の質問が何回も寄せられ、同じ説明を繰り返すことになりました。それほど関心が強いテーマなのだと思います。
ではなぜ、まだ投資に踏み切ってはいけないのか。
1つの理由としていま、マイナス金利政策をはじめとする日本銀行の金融政策で、メガバンクや生命保険会社、証券会社などの金融機関が運用難に陥り、収益が悪化していることが挙げられます。
2012年に第二次安倍内閣が発足して以降、一般企業の内部留保(企業の純利益から、税金や配当金などの社外流出分を差し引いた残り)は4年間で100兆円も増加しました。
各企業は今後も積み上げた内部留保を抱え込むと見られており、融資のチャンスをうかがう金融機関が付け入る隙はありません。
そこで窮地に陥った彼らが狙いを定めたのが、いま本稿を読んでいるあなたのような個人のお金です。
各金融機関はなりふり構わず、利ザヤの稼げるカードローンや、手数料が確実に入る投資商品の販売額を増やそうとしています。収益改善のために、あの手この手で個人の将来不安を煽って「いま投資してお金を増やさないと老後の資金がもちませんよ」と勧誘しているのです。
とくにターゲットにされているのが、働き盛りのビジネスパーソンと、多くの退職金をもらった高齢者です。皆さんのなかにも最近、金融機関から投資の誘いの電話が増えた気がする、と感じている方は少なくないかもしれません。
焦燥感に駆られて「投資をしないとまずいのかな」と考える方が増えていますが、そう簡単にお金を預けないほうがよいでしょう。