どんな環境変化にも適応できる子に! 家庭でやるべき「アグネス流、これからの子育て」
2020年04月30日 公開 2024年12月16日 更新
親が変化のある毎日を工夫する
私は子どもたちにとって毎日が違う日になるように心がけました。仕事が終わって車に乗ったとたんに、今日は何のサプライズにしようかと考えたものです。彼らは「ママが帰ってくると何かが起こる」と思っていて、それを楽しみにしていました。
たとえば、ご飯を食べ終わってそろそろ寝ようかなというときに、私は突然「今日は『夜サッカー』しようか」と言って、屋外で明かりもない中、子どもたちと一緒にサッカーをしました。ボールがどこに行ったかわからないのでみんなで探したりして……。子どもたちは大喜び。帰ってきてお風呂に入り、いつもよりもぐっすり寝ました。
わずか30分ですが、楽しく遊んだことによって母親に会えなかった時間の寂しさが消えたのではないかと思います。同時に、真っ暗な中でどうやって遊ぶかということも覚えたようです。
パパ(夫)もこの教育方法には大賛成でした。驚きがあったほうが子どもたちがたくましく育つという考えでした。パパが帰宅して突然、「今日、これから星を見に行こう」と言ったことがありました。「明日学校です」と言っても、「明日は欠席。早く準備しよう」とパパ。子どもたちは「えーっ」と驚き、私が「学校に行かなくていいの?」と聞くと、パパは「人生は長いから、たった一日学校を休んだって問題ないよ」と言いました。大急ぎで準備をして車で郊外に行き、地面に座って星を見ました。ただそれだけです。それから一生懸命、民宿を探して、みんなでワイワイ温泉に入って、学校を一日休んでおいしいものを食べて……。これは一生忘れません。いま考えると変な親だったかもしれませんが、いまでも子どもたちはこの時のことをよく覚えています。想定外の驚きが喜びを運んでくれた体験でした。
私たちは、「毎日違う生活を送るのが楽しい、当たり前の毎日はない」ということを子どもに教えたかったのです。子どもが小さいとき、毎日決まった時間に寝かせたわけではなく、よく夜更かしをしました。寝る時間が短くなっても、その分ぐっすり眠れば問題はありませんでした。同じお風呂に入るのでも毎日違う入り方をしたりしました。温泉の素を入れたり、泡風呂にしたり、りんご風呂にしたり……。とにかく大きな楽しみや小さな楽しみが積み重なる毎日、明日は何があるのだろうと楽しみな毎日にするように心がけました。家族で釣りに出かけて山の中で道に迷ってしまい、「どうやって宿に帰ろう」というときもありました。
それも子どもたちにとってはよい経験でした。パパもママも冒険仲間という感じでした。もちろん、遊んでばかりではないです。子どもたちは学生なので宿題もやって、試験前にはちゃんと準備をしました。しかし、できるだけ毎日が新鮮で「明日は何があるのだろう。今日寝たら、明日が楽しみ」という生活をさせるように意識しました。彼らにも居心地がよいと感じる範囲はありますが、それでなければ生きていけないという人間にはなってほしくなかったのです。
どこにいてもやっていける人に
子どもたちはどんなところに泊まっても、絶対に文句を言いませんでした。騒がしい環境でも宿題ができました。暑くても寒くても不平を言いませんでした。それは訓練したからこそです。居心地が悪い場所に行っても、逆に快適に過ごせる空気を周りに作ることができます。苦痛を感じないで、慌てない、どこでもやっていける、これが適応力です。
適応力は人間関係にも影響します。新しい出会いに戸惑う人を見かけたりします。慣れている人とは交流できるが、慣れていない人だと、コミュニケーションが取れない……、それは子どもが小さいときから、人間は一人で生きてはいけない、人といい関係を作るのは大切なことだと教えられてこなかったからだと思います。
さらに、人間を知るのは面白いことと教えてあげてください。一人一人の人間には、それぞれに「生きている物語」があります。話を聞いていくと、必ず面白く感じて学ぶものがあります。だから私は、人に対して興味をもつよう子どもに伝えました。ポイントは「できるだけ自分を忘れよう」です。自分のことを話すよりも人の話を聞くことが大事なのです。これはなかなか難しいことです。人間は生まれながらに自己中心的です。これを理解すれば、自分を積極的に抑えることができます。自分を積極的に忘れて、他人に興味をもつことこそ多くの友だちができる秘訣なのです。自己中心の意欲を抑えられる人は友だちに信頼されます。そういう人はどこにいても歓迎されて、過酷な状況の中でも、助けてくれる人が現れ、生きていけます。
これも適応力の一つです。
未来の社会では、月に行くかもしれないし、火星に行くかもしれないし、全く言葉がわからないところで働くかもしれません。どこにいてもやっていけるような、新しい環境を受け入れて楽しめる強さがとても大切です。