コロナ暴落を“神回避” 森永卓郎氏にギリギリで全株売却させた「ある指標」
2020年06月18日 公開 2024年12月16日 更新
《相場の動きが慌ただしい。新型コロナウイルスの感染「第2波」への懸念が国内外で高まり、投資家を混乱させている。はたして、いま投資をするべきなのだろうか。
経済アナリストの森永卓郎氏は、コロナ暴落を見極め、真っ先に全株売却し、「大損」を免れた。“相場の神様”とも称された森永氏は、なぜ大下落を予測できたのか。そして、いまの株式の乱高下をどう見るのか。『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』の発刊を控えた森永氏が、最新の動きを分析する》
*本稿は、『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』 (PHPビジネス新書)の内容を抜粋・編集したものです。
株価の割高指標から「バブル崩壊」を確信
今回の世界的な経済低迷の本質は新型コロナウイルスの感染拡大ではなく、バブルの崩壊です。
リーマン・ショック時に一時的に崩れたものの、中国が異常な規模の投資をして世界経済をバブルに戻してしまいました。そのバブルが本格的に崩壊したいま、株価はさらに下落するのは想像に難くありません。
今回のコロナ禍による経済への影響が本格化する前に、私は投資目的の株をすべて売却しました。「全部売った」のではなく、株主優待が目的で保有している株式は売る必要がありませんから、手元に残しました。
自分を"相場の神様"などと言う気は毛頭ありませんが、理由を説明しておきます。
2019年12月19日、『報道1930』(BS‒TBS)という番組にゲスト出演したのがきっかけです。「米中バブル崩壊前夜? 日本でも増幅するリスク 株・不動産に危険信号」という番組テーマで、他にも経済の専門家が一緒でした。
私は以前から「バブル」と言い続けてきたのですが、そのときの討論を通じ、全員「バブルだ」ということで意見が一致したのです。「これは、100%はじけるぞ」という確信を得ました。
バブルを予感させる証拠はさまざまでしたが、とくに信用に値したのが、ロバート・シラー教授の「シラーPER」。通称、ケープ(CAPE:Cyclically Adjusted PriceEarnings)レシオです。
ケープレシオは、日本では「景気変動調整後PER」とも呼ばれ、株価の割高・割安を測る指標として使われるものです。
通常のPERは、「株価÷一株当たり純利益(EPS)」で算出します。ところがシラー教授は、バブルが膨らむと分子の「株価」も増えてしまうことに気付きました。
バブル期には、利益自体が水増しされます。保有する不動産の資産価値や保有する株価が上昇するなど、企業活動以外の利益が膨らむことが主な原因です。それに比例して分母の「一株当たり純利益」も大きく跳ね上がり、結果、実際より割高感が出なくなってしまいます。
それに気付いたシラー教授は、物価上昇率で利益を実質化するとともに、過去10年分の実質利益の移動平均(時系列データを平滑化するトレンド分析の手法)を分母に用いることにしました。
つまり、その年の利益ではなく過去10年分の実質利益の平均でPERを計算したのです。そうすることで景気循環の影響が調整されるため、株価が本当に割高かどうかをほぼ正確に導き出せることを発見しました。
このシラーPERが25倍を一定期間継続して超える、すなわちバブル状態が一定期間続くと必ずバブルがはじけるというのが、これまでのパターンでした。
2000年代初頭のITバブルの時は79カ月、2009年のリーマン・ショック直前もバブルだったのですが、これが52か月ではじけました。『報道1930』の放送時は68カ月だったと思います。過去の事例からもう十分、満期に達していました。ですから、私は番組で「バブルははじけるぞ」と断言しました。