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ニンジャ、サムライ、スモウ…多国籍軍のラグビー日本代表を“ONE TEAM”に変えたミーティング

藤井雄一郎(ラグビー日本代表強化委員長)

2020年08月12日 公開

 

メンタルコーチ・ガルブレイス氏のアドバイス

反則をしてはならない。負けられない。そんなワールドカップの重圧を乗り越えた裏には、メンタルコーチのガルブレイスの存在もあった。ガルブレイスは春先のウルフパックの活動からジェイミージャパンにコミット。

さまざまな手法で「死を覚悟して戦う意識」「決闘前の準備の重要性」を説いていった。例えば、選手にアメリカのロッククライマー、アレックス・オノルドの映像を見せたこともあった。

オノルドは2017年、ヨセミテ国立公園にある915メートルの岩壁エル・キャピタンを、道具もロープも使わず素手でよじ登る「フリーソロ」で登攀した。ひとつのミスや想定外が死に直結する、まさに命がけの偉業だ。この映像を見せて、ガルブレイスは次のように語った。

「彼はこのクレイジーなチャレンジに挑む前に、徹底的な準備をおこなった。命綱をつけて、二年半毎日この崖を登り、難所については何度も何度も練習した。チャレンジの前には、崖のどこにどんな窪みがあるのか、彼は全て把握していた。大事なことは、入念な準備をすること、そして、本番は『命綱がない』つもりで臨むことだ。死を覚悟するつもりでやれ」

さらに日本代表は共用スペースに甲冑を置くなど武士道をモチーフに掲げており、かつての武士の居住まいにならって「いつ死んでもいいように、美しい生活を」と意識づけた。

結果的には、このような訓示を実践できる選手がワールドカップのメンバーに残り、そうでない選手はドロップアウトしていたように思う。ガルブレイスは、相手に向かう心構えについてもこう強調した。

「メディアに目標を聞かれたら『優勝』と答えろ」

高いハードルを自ら口にすることで、そのミッションをクリアすべく練習を怠らなくなるという論法だ。ジェイミー、ブラウニーらコーチ陣は、同時並行で予選プールの対戦相手に勝つ術を具体的に提示していた。

そのため、もし「アイルランド代表を倒す」という目標に対してさえ半信半疑だった選手がいたとしても、時間が経つほどに勝てる根拠、さらには勝つのに必要なポイントがわかるようになっていたことだろう。

例えば「優勝を目指す→優勝に足りないものはフィジカルだとする→合宿のきつい練習でフィジカルをワールドクラスに鍛える→優勝に近づいたと実感する」といったサイクルで、である。

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