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海外から日本の「一括採用・終身雇用」はどう見えるか? コロナ禍で浮彫りになった「違和感」

酒井潤(シリコンバレー・エンジニア)

2020年08月18日 公開 2024年12月16日 更新

 

「スタンフォード流」「Google流」は正しいか

では、給与第一の働き方を続けたいかというと、そういうわけでもありません。

日本人的な考え方と、アメリカ人的な考え方のちょうど「中間」の働き方。これが最強だと思っています。

汗水垂たらして人のため、社会のために働くことに意義を見出す日本人的な考え方と、人を使って効率的に働き稼ぐアメリカ人的な考え方。「大金を稼ぐ」重要性を理解しながら、同時に「人のために働きたい」という想いをもつ。

この相容れない2つの考え方をもち合わせるのです。

もう少しかみくだいて説明しましょう。

日本では、1日8時間、残業を含めるとさらに多くの時間を仕事に費やします。すると誰もが、仕事に「やりがい」を求めるようになります。家族と過ごす時間やプライベートの時間より、仕事をする時間のほうを楽しもうとするわけです。

こんな極端な考え方がまかり通っているから、日本中でワーカホリック、メンタルダウンの社員が続出するのです。

一方で、年功序列や終身雇用が幻想となりつつある日本では、急激にアメリカ的な働き方が奨励されるようになってきました。

「スタンフォード流」「Google流」なんて言葉が多くのビジネス書のタイトルに書かれるほど、アメリカ流を踏襲する風潮は強くなっています。これもやや極端です。今日までに普通に日本流で働いていた人が、明日からアメリカナイズした働き方に転換できるとは思えません。

 

40歳で会社を辞めよう

そこで私がみなさんに提案したいのが、日本とアメリカの「ハーフな働き方」です。

早期退職の推奨や、副業だけで食べていくなどのように、これまでの働き方を180度変えるのではなく、40歳くらいまではアメリカ人的な働き方をし、ミドルエイジを迎えたら自分の人生を謳歌し、世のため人のためにライフワークと呼べる日本人的な働き方にシフトしていく。

まさに、アメリカと日本のいいとこ取りです。

これなら40代までにある程度稼いだら、物価の安い国へ移住し、午前中は漫画を読み、午後は子どもにサッカーとプログラミングを教える。夜は友人と飲みに行く、といったことも可能になります。

社会貢献やボランティア事業、新たに会社を立ち上げるのもいいでしょう。40代までに頑張った分だけ、存分にやりたいことができます。蓄えも十分にありますから、危機的状況に陥いっても、病気になったりしない限り、当面は路頭に迷うこともないでしょう。

私の場合はサッカーが大好きなので、徐々に本業の割合をサッカー教室や選手サポート事業などに使う時間を増やしていきたいと考えています。同時に、家族との時間や趣味の時間を十分にとる。

50、60歳にもなって好きとは言えない仕事に時間を取られたくありません。ある程度、仕事を自由にコントロールできる状態でないと、いつまで経っても「心が豊かになった」とは感じないのです。

「豊かさ」の定義は人によって異なりますが、私にとっては、「どれだけ自由な時間をもてるか」です。

先にシリコンバレーで効率良く稼ぎ、人生後半での自由な時間を手に入れようとしているのです。まさに「先行逃げ切りの人生」といってよいでしょう。

正直なところ、新型コロナウイルスが世界を襲い、人びとの価値観は180度変わりました。私が暮らすシリコンバレーでも「どう働くか」より「どう生きるか」を議論する人が増えました。40歳以降の人生をデザインする力がビジネスパーソンには求められているのかもしれません。

その点において、日本流とアメリカ流という2つの働き方を両立できれば、自分を含めあらゆる人が幸せになる。そう断言できます。

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