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生き方

学生時代にいなかった「嫌な人」が、社会に出ると増えるのはなぜか?

前野隆司(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)

2020年09月20日 公開

 

社会に出ると嫌な人が多くなる理由

しかし、現代社会は競争社会だと言われます。競争からは格差が生まれます。私は、過度な競争社会は不幸な社会だと思います。

「勝ち組」「負け組」という表現があります。競争の結果、勝った人間は勝ち組として豊かになり、負けた人間は負け組として市場から立ち去る。そういう世界では、お互いに潰し合うことになりがちです。

相手がどうなろうが関係ない。自分だけが勝ち残ればそれでいい。こういう不健全な競争が格差社会をつくります。不健全な戦いの究極が戦争です。

不健全な戦いをするのではなく、お互いを高め合うような競争をすべきです。「切磋琢磨」やスポーツマンシップの世界です。

相手をぶっ潰すために勝ち負けを決めるのではなく、お互いを尊重しながら高め合えるような競争をすること。自分のことだけを考えるのではなく、常に相手を尊重・尊敬して行動する世界。みんなが調和的に生きる競争をすべきなのです。

学生時代、部活動のチームには一体感があったのではないでしょうか。あるいは学園祭や文化祭の活動、クラスでの活動でも、みんなが集団に対する自然な利他心をもち、互いに助け合いながら行動していた。

その一体感は忘れることができないほどの幸せをもたらしてくれたのではないでしょうか。学生だった頃には、金銭的な利益とは無関係な純粋な活動に、ピュアな幸せを実現できていたのです。

ところが、社会に出た途端に、その一体感の素晴らしさを忘れていきます。思いやり・親切・利他の心をどこかに置き忘れて、会社の利益や自分の利益ばかりに目が行くようになっていく。それは言い換えれば、どんどん幸せから遠ざかっていくことです。

残念ですが、そうなってしまう理由は、私たち現代人個々人のせいというよりも、これまでの人類が良かれと思ってつくってきた、現代の文明・文化・制度に潜む欠陥のせいだと思います。

これからは、社会そのもののあり方を変えるべきだと思います。利益ファーストから、幸せファーストへ。

また、制度を変えるのには時間がかかるとしても、一人ひとりにできることはあります。まず、身近な幸せに目を向けることです。

一人ひとりの小さな行動が、少しずつ世界を変える。そして、いつか、必ず、世界の幸せと平和が実現できる。これこそが、幸福学の研究から導き出された論理的帰結です。

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