「若者だからITに強い」 という偏見の罪…思い込みが個人をつぶす現実
2021年05月13日 公開 2024年12月16日 更新
アンコンシャス・バイアスといわれる"無意識の偏見"は、さまざまなところに日常的に存在する。
コンサルタントで、国内外のアンコンシャス・バイアスに詳しいパク・スックチャ氏は、著書『アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見―とは何か』で具体的な例を挙げてバイアスの根深さを説く。
一体どんなバイアスが、どんな場所にあるのだろうか。自らの可能性をつぶす原因にもなりうる偏見の実態を紹介する。
※本稿は、パク・スックチャ 著『アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か』(インプレス社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
見た目による強力なバイアス
私たちは人を見ると、すぐさま見た目で判断します。人は見た目で決まるなどと言われるように、相手について何も知らなくても、パッと見た感じでその人について想定し、判断し、自身も判断されます。
メガネをかけている=真面目
服装が派手=目立ちたがり
金髪=不良
高身長=カリスマ性がある
このように、容姿、着ている服、髪の色、身長、体重等の外見により、私たちは無意識的に相手への態度や行動を変えます。ほかにも「肩書」などの表面的な情報で推測して、無意識的に相手との距離を調整し、態度や行動を変えることもありますね。
人は視覚から80%もの情報を得ていると言われます。それゆえに、視覚からの情報だけで実に多くのことを決めてしまうのです。
第一印象や直感をもつことは問題ありませんが、意識しないと外見や表面的な情報だけで人を評価しがちになります。事実にもとづいた情報がわかってから判断した場合とでは、大きく結果が異なることもあるでしょう。
その事実を認識し、人を評価したり、対応するときは、偏見への意識を高め、事実をもとにして判断に根拠を持つように心がけてください。
人は見かけによらないのです。
偏見にはそれなりの機能がありますから、それ自体は問題ありません。コミュニケーションのスパイスにもなることもあるでしょう。
しかしキャリアや人生、組織等に大きな影響を与え、「理不尽な結果や差別を生むもの」には対応しなくてはいけません。性別、年齢、人種、国籍、LGBT等への偏見は最たるものです。
「男らしい」「女らしい」ジェンダー・バイアス
男は外で働き、女は家庭を守る、といった、社会でつくられた男女の役割についての固定的な観念を「ジェンダー・バイアス」と言います。
ジェンダー・バイアスは、「男らしい」「女らしい」といった固定観念や、それにもとづく差別、偏見、行動を指します。近年では日本でも注目されてきていますね。
東京五輪・パラリンピック組織委員会・元会長の森喜朗氏による女性蔑視発言は、記憶に新しいのではないでしょうか。
「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」(発言より一部抜粋)
「女性っていうのは優れているところですが競争意識が強い」(発言より一部抜粋)
このような発言は、性差別による偏見、ジェンダー・バイアスであり、科学的根拠などもなく、森氏の無意識的な思い込みです。
ダイバーシティの実現を目指すべき東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の立場であるにもかかわらず、自身のもつ固定観念に気づかないまま発言し、森氏がもつジェンダー・バイアスの存在が世界に知れ渡ってしまいました。
また、ジェンダー・バイアスは、男性だけではなく、日本社会全体に蔓延しています。
家庭では「男は仕事」「女は家事・育児」、組織では「管理職の男性」「サポートする女性」といった性別役割分担意識は、実は女性も強くもっているのです。
日本のいくつかの調査では、男性よりも女性の方がより強いジェンダー・バイアスをもっている結果が出ています。つまり女性の方が「女性が家事・育児をしなくてはいけない」「女性らしくおとなしくすべき」そして、「男性の方がリーダーに適している」といった固定観念を、男性よりも強くもっているのです。
日本社会に存在するジェンダー・バイアスの根深さを感じます。