「雑学をひけらかす人」の虚無...古代ローマ哲学者が示した“よい人生の条件”
2021年09月14日 公開 2022年01月13日 更新
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。
今回、紹介するのは『人生の短さについて 他2篇』(セネカ(著)、光文社)。
この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
セネカの生きたローマ帝国"悲劇の時代"
本書の著者である、ルキウス・アンナエウス・セネカは、紀元前4年から紀元後1年の間にヒスパニア(今のスペイン)の南の都市コルドバで生まれたと言われています。その頃のヒスパニアは、ローマの属州となっていました。
セネカ家は父親の時代に騎士階級となり、名家でした。二男だったセネカは兄弟の中でも高く才能を認められていました。幼少期にローマに移ったのは、初代ローマ皇帝アウグストゥスによる安定した社会が築かれた時代でした。
セネカは政治に活かせる弁論術を指南されていきますが、本当の関心は哲学にあったといいます。青年になると師のもとに通い、哲学を勉強していました。その後父の望みに従い、政治の道に進みました。セネカが財務官となる頃には、第三代皇帝カリグラの時代となり、ローマ帝国はしばらく暗帝の時代が続きます。
その後、ネロ帝の政治的補佐をしていきます。ともにネロの補佐をしたブッルスが亡くなるとネロを制御することができなくなり、隠遁生活を送ります。そして、セネカはネロ暗殺の陰謀に加担した嫌疑をかけられ、自害することになります。
セネカが生きたのは、アウグストゥスという名君の遺産があったがゆえに、ローマ帝国内部の権力闘争が過激化した悲劇の時代とも言えるでしょう。外敵の脅威が和らいだときに内部闘争が起きるのは、古今東西共通の現象のようです。
人生の長さとは寿命を指すのか
人生を短いと感じるか、それとも100年にもなると言われる人生を長いと感じるか、どちらの感覚に近いでしょうか。
ここからは本書の幹である人生の長さを扱っていきます。『人生の短さについて』というタイトルからは、いかに人生が短くはかないものであるか、という主張が展開されていくことを予想する人が多いかもしれません。
本書の主張はその予想とは異なります。セネカは、人の生は十分に長く、偉大な仕事をなしとげるに足る時間が与えられていると言っています。ただ、贅沢三昧、怠惰、人のためなどに時間を取られると、死ぬときになって初めて人生が短いと嘆くことになるとも伝えています。
つまり、人生の長さは寿命の長さではない、ということになります。時間の絶対的な長さではなく、意味のある時間をどれほど過ごしたか、で人生の長さが決まるのです。
人生の総決算をするタイミングでは、次のような計算をすると良いそうです。自分の生涯の時間から、債権者によって奪われた時間、主人によって奪われた時間、奴隷の懲罰によって奪われた時間、手下によって奪われた時間、みずからの手で招いた病気によって失われた時間、などを引いていった残りの時間がどれほどあったか。
時代背景が異なるものの、ビジネスパーソンにすぐ転用できそうな内容です。つまり、自分に手元に残る人生はその差分よりも短いのです。
人生を長くするには、いかに長生きをするかで思い悩むよりも、いかに有意義に人生を過ごすかに集中することが良いと考えられます。永遠に生きられるように時間を使うのを止めて、意味のある時間の過ごし方をすべきということです。
生きることも死ぬことも生涯をかけて学ばなければならないのだともいいます。さて、私たちは自分の人生を有意義に過ごせているでしょうか。現実の世界では、簡単に整理がつかないようにも感じます。