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「いつも怒っている人」が心の奥底に抱える恐怖の正体

佐々木正悟(作家/心理学ジャーナリスト),大橋悦夫(実業家)

2021年12月06日 公開 2022年12月27日 更新

常にカリカリしていて、理不尽な怒りを周囲に振りまいている。そんな「いつも怒っている人」の根底には、どのような心理がはたらいているのか?

作家・佐々木正悟氏は著書『つい顔色をうかがってしまう私を手放す方法』で「他人に怒られること」を過剰に恐れる感情のメカニズムとその対処法を紹介している。本稿では、同書より「怒る側の人」の奥底にある「恐怖」に目を向けることの重要性について書かれた一節を紹介する。

※本稿は佐々木正悟著『つい顔色をうかがってしまう私を手放す方法』(技術評論社刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

「怒る人」はおびえている

繊細な人が「不安で不快だ」と感じている「無神経な罵声や行きすぎた叱責」を「放つ人」の心理に迫ってみましょう。おそらく、ふだんは「あの人たちはどうかしているのだ」とみなしてきたせいもあって、「怒る人」の心情にはあまり関心がなかったかもしれません。

それでも、「怒る人の心理」を知っておくことはとても役に立ちます。ここでぜひ押さえておいて、今後「怒る人をむやみに怖がらなくてすむ秘訣」を覚えておきましょう。心理自体は、ひとことで説明できます。

「怒っている人は、恐れている」

それだけです。わたしは、この仮説を20年前から知ってはいました。養老孟司さんの監修された『脳と心の地形図』(リタ・カーター著、原書房)という本は、1999年に刊行されており、わたしは少なくとも2000年には愛読していたのです。いまも手元にあります。

本書には「怒り」という小見出しの一節が収録されていて、ヒトが怒る脳科学的なプロセスが紹介されているのです。そして、そのプロセスは「恐れ」の場合と酷似しているのです。

脳科学的に見れば、「怒ること」も「恐れること」もほとんど変わりがありません。自然界では、身に危険が迫っているからこそ、「怒る」必要が生じるのです。

わたしが子どもだったころ、家の近くに大きなイヌが飼われていました。そのイヌがある日なぜか、子猫を追い回していました。わたしはぐうぜん目撃したのですが、追い回されていた子猫がとつぜん身をひるがえし、牙をむいてイヌに襲いかかるフリをしてみせました。

一瞬のことで、大変な迫力があり、大きなイヌがひるんだスキに、猫は高い樹にのぼって難を逃れたのです。この威嚇行動こそ、「怒り」の原形でしょう。子猫はもちろんイヌにかなうはずもなく、イヌを恐れて逃げ回っていたわけです。

「怒る人」は恐れています。少しくわしく付け加えると、「怒ってみせる人は、怖い相手に向かって威嚇している」のです。イヌを威嚇する子猫と同じです。

そう考えると、怒る人をそれほど恐れる必要はないのだと感じられてこないでしょうか。つまり、「怒っている」ということは「おびえている」ということでもあるのです。「おびえている人」の本当の姿を見れば、怖くはなくなるはずだということです。

 

「怒る人」は無神経ではなく、むしろ繊細

わたしは、倉園佳三さんと共著で『グッドバイブス安心力で生きる:お金、評価、目標、健康、残り少ない時間? 人生100年時代を「不安ゼロ」にする12の技術』という電子書籍を出版しました。「グッドバイブス」は倉園さんの発想です。倉園さんは、書籍やセミナーなどでしばしば次の趣旨のお話をします。

「怒るというのは"おかしな行動"で、人がおかしな行動をとるのは"怖いから"なのです。したがって、怒りを恐れる必要はありません」

わたしは、これを聞いて「怒りは恐れの現れである」という事実を知ったというか思い出しました。しかし、何度か聞いても、どのようにこの事実を現実に適用すればいいのかまでは思い至りませんでした。それくらい、わたしは「他人の怒り」というものを無条件で恐れていたのです。

わたしは「怒る人」が奇妙なほど苦手で、ライフハックや時間管理や仕事術に熱心だったのも、たぶんに「人の怒りを買いたくないから」というのが動機でした。行動を工夫し、時間をうまくやりくりし、仕事を期限内にやり通せば、人はめったにわたしを怒る理由がなくなると信じていたのです。

とにかく、わたしは他人から怒られたくなかったのです。だから、怒る人が内心どう感じているかなど考える余地もありませんでした。「怒る人は、おびえている。うん、それで?」そんな感じでした。

倉園さんに「おびえている人が怖いですか?」とたずねられて、ようやく「なぜ自分は、おびえているかもしれないヒトをそんなに怖がっているのだろう?」と真剣に考えはじめたのです。怒る人はどうかしているわけではなく、無神経でもありません。むしろ、怒る人は繊細なのかもしれません。

怒っている人がおびえているにすぎないのであれば、ほんとうに恐れる必要などはないのです。この真理を折にふれ思い出すことが、「繊細さん」には大きなはげみになるはずです。

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「怒りっぽい親」の根底にある心理

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