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1960年代まで腸の病気は少なかった? 当時ほとんどの人が食べていた“意外な食品”

松生恒夫(松生クリニック院長、医学博士)

2021年12月16日 公開 2022年03月09日 更新

 

スーパー大麦やもち麦ご飯のすすめ

もち麦の歴史は古く、紀元前から西南アジア地域で栽培が始まり、その後ユーラシア大陸全土とアフリカ東北部にまで広がりました。日本では、瀬戸内海に面した四国、中国地方の各県で、昭和初期まで広く栽培されていました。

現在、国内での生産が復活していますが、そもそもはだか麦の国産自給率は10パーセント以下しかなく、スーパーなどで売られているもち麦も輸入品が多いようです。では、スーパー大麦やもち麦の特徴とはいったい何なのでしょうか。

第一は、水溶性食物繊維の含有量の多さです。通常の押し麦は、100グラムの中のエネルギー量は340キロカロリー、食物繊維含有量は9.6グラム(うち水溶性食物繊維6.0グラム、不溶性食物繊維3.6グラム)です。

一方、もち麦は、100グラム中でエネルギー量339キロカロリー、食物繊維含有量14.6グラム(うち水溶性食物繊維9.0グラム)と、押し麦よりさらに食物繊維が多いのです。

さらにオーストラリアで開発されたスーパー大麦(バーリーマックス)は大麦の一種で、100グラム当たりの食物繊維量は23.3グラム。白米は0.5グラムですから、約40倍!大麦β-グルカンという水溶性食物繊維をたくさん含んでいるのが特徴です。また、食物繊維と同様の働きをする難消化性デンプンを多く含んでいます。

β-グルカンには、悪玉コレステロール値を下げる、糖質の吸収を抑え食後の血糖値の上昇を抑える、満腹感を維持するなどの働きがあります。さらに、スーパー大麦を朝食で食べると「セカンドミール効果」といって、糖質の吸収を抑える働きが次の食事まで続くため、ダイエットはもちろん糖尿病予防にも効果を発揮します。

ご飯は、白米だけでなく、ぜひスーパー大麦を混ぜて麦ご飯にしていただきましょう。スーパー大麦が手に入りにくいという方は、同じようにβ-グルカンがたくされ含まれているもち麦や押し麦で代用してみてください。

水溶性食物繊維を多く含有しているスーパー大麦、もち麦などが体や腸によいのは、この水溶性食物繊維が分解されて産生される酪酸に秘密があります。

 

注目される酪酸の健康作用

短鎖脂肪酸のひとつで、水溶性食物繊維と深く関係するのが、酪酸です。そしてこの酪酸が、近年さまざまなところで話題になっています。酪酸の説明をしていく前に、酪酸の効果を最初に紹介しましょう。

1.腸内フローラをよくして、整腸する効果
2.潰瘍性大腸炎などの腸の病気の改善効果
3.制御性T細胞(Tレグ)の増殖を促すことで、アレルギー性疾患や自己免疫疾患を抑制する作用
4.肥満細胞の増加を抑制し、肥満を防ぐ効果
5.インクレチンに作用して、血糖値をコントロールする作用(短鎖脂肪酸)

脂肪酸は炭素と水素と酸素からなる物質で、植物油や動物脂肪の主な構成成分です。炭素の結合数によって、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の三つに分類されます。

たとえばリノール酸、DHA、EPAなどは長鎖脂肪酸で、ココナッツオイルに含まれるラウリン酸は中鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸には、酪酸、酢酸、プロピオン酸があります。

脂肪酸の中に酢酸(酢の主成分)が入っているのを、不思議に思われる方がいるかもしれません。しかし酢酸はれっきとした脂肪酸の一種です。酪酸や酢酸はリノール酸などに比べて炭素の結合数が少ないため、結果として脂肪の性質よりも酸の性質が強く出ているのです。

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腸が元気でいるために必要な「酪酸」

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