腸が元気でいるために必要な「酪酸」
酪酸は大腸においては第一のエネルギー源であり、小腸においてもアミノ酸の一種であるグルタミンに次ぐエネルギー源になります。腸が元気に活動するには欠かせない物質といえますが、実は口から摂取しても腸内に到達させることができません。
酪酸を腸内に届けるには体内で作る必要があるのです。では短鎖脂肪酸というのは、どのようにして体内で作られるのでしょうか。
人間の腸内にはさまざまな細菌が常在しています。なかでも、嫌気性菌(酸素を嫌う菌)と呼ばれる菌は、食物繊維を発酵させ、単糖類と短鎖脂肪酸に分解する性質を持っています。この働きによって短鎖脂肪酸は体内に生成されるのです。
短鎖脂肪酸は、腸内の酸性度を高めるので悪玉菌がすみにくくなり、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌を増加させます。その結果、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスがよくなって、腸は健康になるというわけです。
ちなみに腸から吸収された短鎖脂肪酸の一部は、大腸上皮細胞によって消費され、残りの大部分が肝臓で代謝されます。とりわけ酪酸は、大部分が大腸上皮細胞のエネルギー源として、残りは肝臓で脂肪合成の基質として利用されるのです。
プロピオン酸も、大腸上皮細胞のエネルギー源として使用されますが、使われるのは50パーセントほど。残りは肝臓で脂肪合成の基質となります。短鎖脂肪酸の中では酪酸がもっとも多く大腸上皮細胞のエネルギー源となるのです。酪酸をはじめとした短鎖脂肪酸は、食物繊維、なかでも水溶性食物繊維をエサにする腸内細菌の働きによって産生されます。
つまり、酪酸は水溶性食物繊維を摂ることで、より多く産生されるということです。大麦は、水溶性食物繊維含有量が多いので、意識的に摂ることで、腸は健康になっていくのです。