声色は大げさに変えない方がいい...「読書好きな子」に育つ読み聞かせ術
2021年12月21日 公開 2021年12月22日 更新
子どもが集中して聞く読み聞かせの3つのポイント
子どもにたくさん読み聞かせをしたのに、本好きにならないというのは、興味関心を引き出せていないことが原因かもしれません。
子どもは好奇心が旺盛です。楽しいことはご飯や寝ることを忘れるくらい集中します。そして、子どもは一番親が大好きです。親が興味をもっていることに、一番興味や関心を示します。まずは親自身が、絵本の読み聞かせを楽しんで欲しいと思います。
そうは言っても、親の日常は家事や仕事で忙しいのも事実です。そんな中、頑張って読み聞かせしても、楽しんでもらえなかったり、集中してもらえなかったりするとがっかりしますよね。
子どもが集中する読み聞かせのポイントは3つです。1つ目は「ゆっくり読まないこと」。右脳が優位な子どもはゆっくり読み聞かせるよりも、普通の会話のスピードで読み聞かせることで、最後まで読む集中力がつくようになります。1回の読み聞かせで全部理解させようとしなくてよいのです。何度も繰り返し同じ絵本を読み聞かせしてあげてください。
2つ目は「声色や抑揚を大げさに変えないこと」です。子どもは大人以上に五感の感覚が敏感ですので、絵や文章からしっかり感じることができます。また、良い悪いなどの判断基準もまだありません。声色や抑揚を変えることは、親の基準や社会的な価値観を無意識にすり込み、子どもの感性で感じることを妨げる要因にもなります。
3歳頃からは他者との関わりもしっかり認識できるようになるので、相手の考え方気持ちも理解できるようになります。お子さんが絵本の読み聞かせに慣れた3歳半頃からは、絵本を読み聞かを通して、子どもとの対話も楽しむといいと思います。
ただし、無理に感想を言うように誘導したり、強制したりすると、読み聞かせが嫌いになってしまうことがあります。ですから、子どもが伝えた意見や感想は、とんちんかんなことでも「そう感じたんだね」と最初に肯定してください。そうすることで、自分の考えをしっかり伝えられるようになります。
もし「わからない」「別にない」と答えが出なくても、肯定してあげましょう。そして、「ママはこう感じたよ」などと親の考えを伝えることで、子どもは新しい視点を持てるようになります。
そして、3つ目が一番重要です。読み聞かせを1冊終えるごとに、子どもをほめたり、認めたりしてあげてください。子どもにとっては、親がほめて、認めてくれることが何よりもうれしいのです。「最後まで集中していたね」「○○ちゃんに読めて嬉しかったよ」など、この一言こそ子どもが絵本好きになる大きなポイントです。
子どもの個性も見出すことができる
読み聞かせへの反応を通して、子どもの個性を見出すこともあります。例えば、私自身も子どもが小さい頃から読み聞かせをしていましたが、長男と次男では反応が全然違いました。はじめは二人一緒に読み聞かせをしていたのですが、小学校になると長男は、一人でも本を読む読書家になり、一方で次男は本に興味を持たないままでした。
「この違いはなんだろう」と考えた末に、どちらかというと、長男の興味のある本を無意識によく選んでいたことに気づきました。そこで、次男と二人だけの絵本の時間を持つようにしました。すると、今まで一緒に読み聞かせをしていた絵本が、次男の興味の対象ではなかったことがわかったのです。
また成長によって体力も違うので、長男の場合は夜寝る前の読み聞かせでも「もっと読んで!」というタイプでしたが、次男はすぐに眠くなってしまうので、ご飯やおふろの前など、日中の隙間時間を読み聞かせの時間に使うようにしました。
長男は冒険物の絵本が大好きで、次男は図鑑や迷路などの絵本が大好きでしたが、大学生になった今では、兄弟とも様々なジャンルの読書を楽しむようになりました。
子どもに読書の環境を作ってあげられるのは親が楽しむことが一番だと思います。そして、絵本なら簡単に親子で楽しめます。私は今でも2,000冊の絵本を家の本棚に置いています。
なぜなら、大学生になって親元から離れて暮らす息子たちが帰省したときに、絵本を見るだけで、子どもの頃、読み聞かせをしてもらった温かい気持ちを思い出してくれるからです。読み聞かせをしているとき、一緒にストーリーを共感しながらワクワクしたり、楽しんだりしたことを感覚で思い出すことで、親子の絆をずっと繋いでくれていると思います。
本を読むことを習慣にすることは、親から子どもへ与えられるギフトだと思います。その土台を作る、絵本の読み聞かせを習慣にしていただきたいと思います。
【PROFILE】
仲宗根 敦子(なかそね あつこ)
親と子のしあわせな未来をつくる、絵本の読み聞かせ方を指導する一般財団法人「絵本未来 創造機構」代表理事。大手航空会社に勤務中、長男が2歳、次男が0歳のときに、警察官だった夫が殉職。その後フルタイム勤務のシングルマザーとして、子どもたちに接することができる短い時間の中で育児に悩み、息子たちに絵本の読み聞かせを始めたところ、子どもの変化と自身の精神安定のために、いかに絵本が良いかを実感。
その内容を体系化し、1人で講座をスタートさせ2017年に協会設立。絵本講座以外に文章講座、夢を叶える講座などを主催し、小・中・高校・大学や公立図書館、企業等での講演を行い、団体設立からわずか4年で、約4万人が講座を体験。
また、日本全国はもちろん、海外では台湾・シンガポール・イギリス等で、同協会の認定講師、約700人が、絵本読み聞かせのプロフェッショナルとして活躍している。著書に、『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』(パイインターナショナル)がある。