2人以上のお子さんをお持ちの方であれば、兄弟姉妹同士について似ていると感じたり、まったく違うなと思ったりすることがありますよね。当たり前のことを言っているようですが、兄弟姉妹というのは、とかく比べられるものです。
私には3人の息子がいますが、長男が俳優・歌手の菅田将暉という仕事柄、多くの人の目に触れているせいもあって、知らない人たちからも直接、間接的に比べられることが多かったはずです。そんな環境の中で兄弟同士はどのように感じ、成長していったのでしょうか。
「兄弟同士を比べる」ことについて弟2人が実際に感じていたことも交えながら、普段の生活の中で実践してきた「ちょっとした工夫」についてお話ししたいと思います。
※本稿は、菅生好身 著『3兄弟のあしあと 〜才能の芽を育んだ菅生家の子育て記』(辰巳出版)を一部抜粋・編集したものです。
自然に自信を身につけられるように
菅田将暉という兄を持つ弟2人。私たち親が知らないところでも、「お兄ちゃんと比べて○○だね」「こういうところ、お兄さんと似ていないよね」とさんざん言われてきたに違いありません。
しかしうれしいことに、次男と三男を見ていると、「兄は兄、自分は自分」と思っているのがわかります。
もちろん兄弟ですから似ているところはあります。生活をともにし、同じものを食べてきましたし、うちでは家族そろって映画や舞台、音楽を楽しみ、感想を言い合うことも多いので、考え方が似通ってくることもあるでしょう。けれど、それでもひとりひとりに個性がありますから、兄弟で接し方に差をつけないというのは、子育ての絶対のルールとして心がけてきました。
差を感じると誰だって、「お母さんが兄のことばかりかわいがるのは、ぼくがダメな子だからだ」「弟ばかりほめられるなぁ。どうせぼくなんて......」などといじけた心が出てきてしまうものです。自分に自信が持てないまま育つと、将来もつらい思いを抱えていくことになると思います。親の接し方ひとつで、それが避けられるのです。
そのうえで大事なのが、ほめることです。たとえ小さなことでも「あなたはこういうところがすごいんだよ」というメッセージをオーバーなくらいに伝えてきました。仮に子どもたちが外で比べられていたとしても、家に帰れば誰かと比べることなく自分を見てくれる人がいる。
それさえわかっていれば、外で何か言われて気持ちがグラついても、「自分は自分」というところに戻ってくることができます。軸のようなものができるのだと思います。
しかし、"比べる"ことが常に劣等感につながるわけではありません。次男と三男は、「ただ、自分で勝手に比べたことはあった。お兄ちゃんは出来がいいけど、自分はぜんぜん足りないな、って」と、口をそろえて言っていました。
ここにあるのは、自分の前を走る兄を目標とし、そこに追いつけ追い越せと奮起する向上心です。年齢が低いときほど、先に生まれた子のほうが何をするにしてもうまくできるのは、親から見れば当然ではありますが、下の子はできない自分にもどかしさや悔しさを覚えるものなのでしょう。
そこからチャレンジ精神も芽生えてきます。兄弟というのは、ライバルであり成長の仲間でもあるのですね。親が子をほめると、兄弟間でも「やるなぁ!」「すごいやん」とほめ合うものです。ほめるところはいっぱいありますから、比べている暇なんてないのです。
人前で子どもをけなさない、愚痴はほどほどにいいところも話す
日本には家族のことを外で話すときに、謙遜して言う習慣がありますね。身内をへりくだって言うことを美徳とする文化自体を悪いというわけではありません。けれど、けなしたりおとしめられたりすると、人というのはそれに見合った人間になると私は思っています。
裏を返せば、ほめればほめるほど、それに見合った人間になるということです。大人でもそうなのですから、子どもはなおさらです。
ママ友同士で集まると、夫や子どもの愚痴がぞろぞろ出てきますし、こぼし出したら止まらない。家族に八つ当たりするよりはよほどいいのですが、できれば愚痴で終わるのではなく、家族のいい面も話してほしいのです。
私は、家族のことをほめるのと同時に、その場にいるお子さんのこともほめます。どこの子でもほめるところはいっぱいありますから。するとそのお母さんも「そうそう、この子こんないいところがあるの」と話し出すのです。
子どもたち本人がいないところでも、親がほめればほめるほど、他人からもほめられる子に育つと思ってのことです。それに、家族のいいところを披露し合うって、愚痴を吐き出すよりすっきりするんですよ!