ポジティブな考え方を養うために
我が家では、父親が夕食のときに決まって「今日あった、よかったことを3つ言おう。」と言います。
子どもたちは「よしっ、これをみんなに聞いてもらおう」と目を輝かせることもあれば、「え~、またはじまったよ」という顔をするときもあります。よかったことが、とっさに出てこないときもあるのですね。
むずかしいようですが、些細なことでいいんです。どんなに小さなことでも、たいしたことないと言われることはありません。うちでは家族全員が、ポジティブ思考の持ち主です。困ったことやトラブルがあっても、前向きにとらえる力があります。
長男が出演したある映画で、撮影が終わってしばらくたったタイミングで、監督から「あのシーンを撮り直したい」と言われたそうです。再撮影というのは現場では歓迎されないことが多く、予算もその分かかるので、最近ではめったにないことなのだと聞きました。
ですが長男は、再撮影をうれしいこととして受けとめました。監督の作品に対する思い入れやこだわりを感じて、自分がそこに参加できることを誇らしいと感じたようです。
「よかったことを3つ」これを日課のように行ってきたことで、長男は仕事でたいへんな局面に出くわしてもそのことをポジティブにとらえ、それどころか感謝さえできたのだと感じます。
ネガティブ思考は、何か新しいことにチャレンジしたいという気持ちを萎えさせ、いろんな機会を奪います。子どものときからポジティブな思考を養うことができれば、人生が豊かになると思うのです。
明るい家庭の秘策!? "怒らないキャンペーン"
たくさんほめることやポジティブ思考を心がけているとは言っても、子育てではずっと試行錯誤してきました。自分で振り返っても、もっと早くに気づいていたかったなと思うことだらけです。
たとえば、朝。子どもたちが時間どおりに起きてこないというだけで「はよ起きぃ!」と言い、登校しようとすると「あれ持ったん? 忘れもんないやろね!?」と大声を出していました。言っても聞かないから、もっと強く言うしかない。
しかも3人いますから、私の喉は休まる間もなく、当時家の中の空気は、はっきり言っていいものではありませんでした。息子たちもムスッとしていることが多く、頭が痛い、お腹が痛いと訴えてくることもよくありました。「頭が痛いンはこっちやわ....」とぼやきたくなると同時に、なぜこんなことになるのだろうと悩んでいました。
どうしたらいいんだろう、私は子どものためにやっているのに....。そんなころ親しい方から、家族に対しても毎朝よそ行きの明るい声で挨拶をしているというお話を聞いたのです。その方のご家族は常にみなさんの機嫌がよく、円満なご家庭でした。
身内に話しかけるときと他人に話しかけるときとで、声色を変える。誰でもやっていることですよね。私も家では大声を出していても、ゴミ捨てで外に出てご近所さんに会った瞬間、「おはようございますー♪」とよそ行きの高いトーンに切り替わります。まさかそのちょっとしたこと、声が秘訣? そのくらいだったら私も真似できそう! そう思いさっそく実践することにしました。
そうして、"怒らないキャンペーン"をはじめたのです。
怒りたくないのにイライラ......その根元は"我"でした
私も根が関西の人間なので、子どもたちによそ行きの声で「おはよう♪」と挨拶するだけでは飽き足らず、「もう起きてくれたん~? ありがとう! イェーイ! ハイタッチー!!」とテンション高く迎えます。子どもたちは最初は目を丸くしていましたが、次第にノリノリでハイタッチしてくれるようになりました。ちょっと前までお腹痛い、頭痛いと言いながら起きてきた子たちとは、別人ではないかと思うほどでした。
学校へ送り出すときは、吉本興業の芸人さんよろしく「いってらっしゃい、また来てなー!」と大きく手を振りました。忘れ物をしても宿題をしていなくてもいいじゃない、とにかく元気に帰ってきてくれればいい、という気持ちです。すると子どもたちは、「あぁ、また来るわー!」と走って学校に向かうんです。
忘れ物をして学校に行けば、困るのは自分です。気温の低い日に上着を持たずに出かけて、寒くなるのも自分です。そうして息子たちが自分で気づくようになり、私は何のためにいままで怒っていたんだろうと思うほど、忘れ物は自然に減っていったのです。
成長した息子たちに今、母親である私はどのように見えているのか聞いてみました。
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(3兄弟コメント)
長男
明るーくて、楽しー人。感受性が強く、誰よりもよく笑い、涙を流す人。
人の悪口を聞いたことがないし、いい悪いで物事を判断しない、否定することを知らない人という感じ。
次男
明るいお茶目な女の子ママ。
真剣にやることはしっかりやるけど、ふわふわした天然なとこも…。
三男
キャハキャハしててかわいくて、なんでも聞いて受けとめてくれる人。
悩んでることがあれば母に相談してみたら? って言える人かな。
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思えば私がガミガミ言っていたころ、子どもたちは常に追い立てられていたのですね。そりゃ頭痛、腹痛が起きますよ。子どものためと思っていたのですが、実際には、子どもたちが起きてこないのが気に入らない、思うように事が進まなくてイライラするという、自分の感情が先立っていました。いわゆる"我"です。
怒りたい感情を、いったん封印する。ストレスが溜まると思われるかもしれませんが、実は逆なんです。ガミガミ言うほうが自分の負担が大きく、私は毎日消耗していました。それをやめたことで気分が楽になったので、"怒らないキャンペーン"は私自身のためにもなりました。
同じ口を使うなら、怒るよりも、子どもをほめることに使いたい。家の中で叱られてばかりの子は、外でも叱られることが多くなるようです。家の中でほめられて育った子は外でもたくさんほめられるということを、我が家の3兄弟は証明していると思います。