種族を超えて、強い絆で結ばれた2匹が作った土台
ビブとチャァは強い絆で結ばれている
翌年7月には、千葉県のシェルターから子猫のチバ(♀)がやってきた。チャァは我が子のようにチバを可愛がり、ずっとそばにいて舐め回していた。少々スキンシップがパワフル過ぎる時には、ビブが間に入って子猫にケガがないようサポートをした。それから数ヶ月、3匹は種族の垣根を超えてずっと一緒にいたという。
2016年3月、ふじおか家の最長老のボス犬・アカさん(♀)が亡くなった。代わってボスになったのはチャァだった。群れ全体を見なければいけない立場のチャァは、猫たちとも仲良くやりつつも少し距離を置くようになり、以前のようにベッタリとはしなくなった。
それでもふじおか家に迎えられた動物が、犬猫の別なくチャァの歓迎を受けるのはチバ以来の伝統だ。
ガリガリに痩せて助けを求めているところを保護された子猫がケージに入ってやってきた時は、「ここから出せ!」と主張するように吠えた。もしかしたら、狭い檻に閉じ込められた辛い幼犬時代の自分が重なったのかもしれない。チャァはケージを開けてもらうと、ベッタリと子猫に寄り添って1週間離れなかったという。
チャァが率先して面倒を見ることで、犬や猫は孤立することなく必ず家族の一員として認められる。多頭飼育につきものの「合わない・馴染めない」という悩みはふじおか家には無縁であり、動物たちは平穏に暮らしているという。
「みんな『凄いね!』と言ってくれますが、私は本当に何もしていません。本当にうちが凄いのだとしたら、すべてビブとチャァのおかげです。猫も犬も楽しく暮らす土台も、群れのベースもみんなビブとチャァが作ったんです」
そう語るふじおかさんは、チャァのボスとしての優しさは、ビブから受け継いだものだと確信している。
歳をとって家族の状況もメンバーも変わっていく中、チャァはビブに会いに行ったり、遊びに誘ったりはしなくなった。しかし、昼寝をしているビブが、チャァが近くを通るとチョンと軽く前足でタッチして挨拶することがあるという。
立場が変わっても2匹の心は変わらず通じ合っているに違いない。