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「文化人類学」は分断する時代の救世主となるのか?

奥野克巳(文化人類学者)

2022年08月18日 公開

 

SNS時代に文化人類学が重視される理由

19世期の哲学者フリードリヒ・ニーチェは「自分に近いものはよく見えるが、遠く離れたものはよく見えない」と言いました。

インターネットの普及によって発達したソーシャル・ネットワークは、遠く離れた人々とのつながりを可視化し、結びつきを強めましたが、私たちはあくまでも遠く離れたままだとも言えます。ネット上では他者への無理解と自分勝手な見解に基づく、罵詈雑言が溢れているからです。

ネットの普及によって私たちは近づくどころか、より分断を深めていると言えるかもしれません。

それゆえ、ソーシャル・ネットワークの中で、人々はつながるどころかますます分断を深め、対立が助長されている現代世界に光明をもたらすためには、20世紀以降の文化人類学が行ってきたように直に異文化に触れ、その内側から他者の文化を理解するという手法は未だに有効なのではないでしょうか。

自分にとってなじみの薄い異文化にどっぷりと浸かって、そこからの視点で世界がどう見えるのかに専念することから出発する文化人類学の見方や考え方は、分断される現代世界において、ますます大切なものになっていくように思います。

 

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