コミュニケーションは会話のキャッチボールと言われるように、聞くことと話すことのバランスが重要です。しかし、「話し上手の聞きべた」というたとえがあるように、「聞くこと」が苦手で十分な対話ができない人も少なくないはず。
そこで、目白大学名誉教授の渋谷昌三氏著「怖いくらい「本当の自分」がわかる心理テスト」(PHP文庫)の中から、コミュニケーションの傾向を再確認できる心理テストと、会話のコツをご紹介します。
※ 本稿は、『怖いくらい「本当の自分」がわかる心理テスト』(PHP文庫)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。
11の項目で"コミュニケーション力"をチェック
まず初めに簡単な心理テストをします。つぎの項目で自分にあてはまる項目が、いくつあるか数えてください。
□ よく知らない話題でも、適当に話すことができる
□ 正当な理由があれば、まじめな顔でウソがつける
□ 相手によって、別人のようにふるまうことがある
□ 楽しくなくても、楽しそうなふりをすることがある
□ 関心を引くために、自分の意見を変えることがある
□ 自分に期待されていることがわかれば、そのとおりにする
□ 相手に応じて自分の印象を変えることができる
□ 必要なら、いつでも愛想よくすることができる
□ 相手の目を見れば、その人の気持ちがわかる
□ 他人の感情や本音を読むのが得意である
□ ウソは、その人の言い方やしぐさからすぐわかる
【診断結果】
6項目以上にあてはまったあなたは…
常に自分を監視し、言動をコントロールする「セルフ・モニタリング」の傾向が強い人と言えます。
つき合い上手は「気づかないふり」が得意
セルフ・モニタリングという言葉があります。俳優が舞台である役割を演じるときのように、人間関係という舞台の上で、自分の言動をコントロールすることを意味します。
セルフ・モニタリング傾向の高い人は、その場の状況にふさわしい行動をとっているかどうかについて、つねに自分をモニター(監視)しています。
先ほどの心理テストで、6項目以上にチェック印をした人は、セルフ・モニタリング傾向がとくに高いタイプと言えるでしょう。
セルフ・モニタリングの高い人は、相手の言動に合わせて、自分を演技するのが上手です。しかし、相手は、「自分はうまく操られている」と勘ぐっているかもしれません。
「自分の言動が見透かされ、好きなように動かされている」と思うと、相手は強い不安感と警戒心をもってしまうでしょう。
セルフ・モニタリング傾向の高い人は、ときには、「気づかないふりをする」「知らん顔をする」「大目に見る」といった思いやりが必要です。これが、つきあい上手になるコツと言えるでしょう。
聞き上手が好かれる本当の理由
「話し上手の聞きべた」というたとえがあります。自分ばかり一方的に話したて、他人の話を聞こうとしない人は、聞き手の本意がわからないので、結局、充分な対話ができない、との戒めです。
ところが、「聞き上手の話しべた」。つまり、他人の話を聞くのが上手な人は、意外と話すのがへたである、とのたとえもあります。
また、「話し上手の口べた」ともいいます。口べたな人は、相手がよく理解できるように話そうとするので、かえって話し上手になれるというわけです。
話しべたや口べたな人は、へたであるがゆえに、自分の気持ちを聞き手にわかってもらおうと一生懸命話します、相手の話を理解しようと聞く努力をします。こうした態度が、相手のハートをつかむことになるのです。
自己開示という言葉があります。自己開示とは、自分のことを他人に正しく話すことです。ところで、おしゃべり療法という面白い方法があります。その効果は次の通りです。
第1に、相手に自分の気持ちを理解してもらおうと一生懸命説明するプロセスのなかで、自分の考えや問題点がはっきりしてきます。洞察と呼ばれるものです。
第2に、自分のことを他人に話すと気持ちがスッキリします。浄化と呼ばれています。
聞き上手になるということは、相手に言いたいことを好きなだけ話してもらうことです。つまり、相手におしゃべり療法を行うことです。自分のことを存分に話した人は、自分の気持ちが整理できる(洞察)し、他人に話したことで不満や悩みが解決される(浄化)というわけです。
ところで、聞き役になって、相手に自己開示してもらうと、その相手から好意をもたれやすいことがわかっています。だから、聞き上手な人は他人から好かれることになります。
セルフ・モニタリング傾向の高い人は、聞き役になるよりも、自分から積極的に話そうとします。そのため、上手に話をしようと考えがちです。
このような人は、とくに聞き上手になるように気をつけて、相手に歓迎されるような会話を心がけたいものです。