グループ内の「違い」こそが仲をさらに深めてくれる
そんな中でも細々DJを続けていたら、31歳のときに知人に声をかけられ、小室哲哉さんがかかわるイベントに出演することになりました。
六本木のスタジオにご挨拶に行った際、小室さんの音楽づくりを目の当たりにし、「そこまで突き詰めるのか」と仰天。人生で他に経験したことのないオーラを感じましたね。
そこで思わず「明日も来ていいですか?」と聞いてしまい、なんと快諾されて、それから1年近く毎日そのスタジオに通うことに。
小室さんは、ただ仲間とカラオケに行っただけでも「こういう間奏がサビを盛り上げる」「こういう音運びなら皆がノれるのか」といった「収穫」を手に入れる。どこまでストイックなんだ、と思っていました。
その後に小室さんプロデュースで「TRF」が結成され、僕もメンバーに。TRFはボーカルとダンサー、そしてDJの5人組です。その中だと「DJ」のキャラが1番弱い、ということで、キャラの補強も兼ねてリーダーを務めていました。
ですが、それらしいことを積極的にしていたわけではありません。僕がリーダーとして心がけたのは、ひたすら聞き役に回ること。「こうだ」と僕から提示するのではなく、それぞれの意見を出しやすい環境づくりを意識しました。
というのも、僕らは全員が「専門家」なんです。DJのプロとダンサーのプロでは、考え方や意見なんて違って当然。営業と経理と企画、それぞれモノの見方が違うのと同じです。
意見の違いがあることを認めれば、変に「空気を読む」必要もなく、「なるほど、ダンス演出を考えればこういう選曲、曲順もアリなのか」など、相手の考えを受け入れやすくなります。
意見のぶつかり合いなんて当然起こる、と認めることが、本当の意味で相手を理解することにつながるんです。これは、メンバーの個性豊かなTRFでリーダーをしていたからこそ学べたことですね。
深夜の「天狗」コスプレで見栄は要らないと気づけた
TRFの活動は続いていますが、今では個人の活動にもウエイトが割かれています。特に僕は、現在バラエティ番組に出演する機会がかなり増えています。
このこと自体は非常に嬉しかったんですが、僕はそのときもう50歳過ぎ。SNSでエゴサーチをすると「仕事選ばなさすぎ」という意見もあって、そのときは「僕もミュージシャンだし、もう少しカッコつけたほうがいいのかな」と悩みましたね。
でも、そんな葛藤を吹き飛ばすロケがあったんです。僕が天狗の格好をして、すごい高さの滑り台から滑り降りてきて、芸人さんをビックリさせる、という企画でした。
企画の概要だけ聞いて夜中にロケ現場に着くと、何やら巨大滑り台と天狗の衣裳が置いてある。僕はこのときまで、天狗の格好をする、なんて聞いてなかった(笑)。
これはさすがに断るべきなのか、どうか...とずいぶん悩み、コスプレを受け入れてからも、まだ「もし撮れた映像を見てあまりにダサかったらNGを入れようか」とも思っていました。
ですが、いざ巨大滑り台に上り、現場を見渡してみると、真夜中にもかかわらず、年配の大道具さんや照明さんなど、大勢のスタッフの方たちが、一生懸命働いてくださっている。
彼らの労力をちゃんと結実させられるかどうかが、ひとえに天狗の格好をした僕にかかっているんです。そう思ったら、変な見栄はどこかにすっ飛んじゃいました。本当の自分以上に自分をカッコ良く見せる必要なんてないな、と思いましたね。
その場にいる人たちもみんなが何かの「プロ」で、プロが集まって何かに全力で取り組んでいる。そして、自分がその空間の主役なんです。これは最高に幸せなことだなと思いました。それからは、そういったバラエティの仕事にもしっかりとプライドを持って取り組んでいます。