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なぜいつも勝ち馬に乗れるのか? 社内で「意見が通る人」の特徴

和田秀樹(精神科医)

2022年10月03日 公開 2024年12月16日 更新

思うように意見が通らない時には、周囲の力を借りることも重要。他者の力で「他力本願」に意見を通すテクニック、そして周囲を仲間にする方法を、和田秀樹氏が紹介する。

※本稿は、和田秀樹著『なぜあの人の意見が通るのか』(PHP新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

ゴルバチョフ氏を大統領に変えた“根回し力”

他社では通る意見も、自社では通らないこともある。玩具メーカーのタカラトミーはユニークな商品を次々と発表するが、同じ商品企画が昔ながらのトイメーカーで受け入れられるかといえば別問題だ。つまり「通る意見」「通らない意見」の枠は、会社によって異なる。

しかし裏を返せば、自社なりの成功パターンもあるということだ。部長に気に入られたら通る、「業界では誰もやっていない」という前振りがあれば通る、ヒットよりもホームラン狙いの企画の方が通る、など、必ずと言っていいほど会社ごと、あるいは部ごとのパターンがある。

日本の会社でよく見られる「勝ち馬」は、キーパーソンをおさえるというやり方だ。創業者一族に気に入られたら通る、有力顧客が「こんな商品が欲しいんだけど」と言ったら通る、なぜか生産部門が妙な権限を持っているなど、会社にはなぜか影響力をもつ人がいる。

「根回し」と言うと政治的な匂いを感じるかもしれないが、キーパーソンを見極め、良好な関係を築いておくのも、意見の通過率を上げる1つの手なのだ。

逆に、通らない筋のものに時間をかけるのはやめた方がいい。強い意見を作る努力は必要だが、通らない筋のものは努力しても通らない。

もし「20代の意見は通らない」という暗黙のルールがあるのであれば、「強い意見を作る」作業はそこそこにして、キーパーソンを口説くことに時間を割いた方がいいかもしれない。

『失敗学のすすめ』(講談社)の著者である畑村洋太郎さんは、失敗しない方法として「面従腹背」を挙げている。勝てる力がないうちはケンカをしない、という戦法だ。

旧ソ連のゴルバチョフ元大統領がいい例だという。トップになるまでは、とにかく牙を見せず、上の人にかわいがられて育った。共産党でもエリート集団だったが、偉ぶる態度は一切なかったそうだ。

しかしトップになって以降、大きな改革を実行し始めた。トップになった途端に性格が変わったのではなく、「トップになるまで逆らわなかった」のだ。

20代の頃、私は精神分析の本を書くチャンスに恵まれなかった。原因は相手からなめられていたからだ。企業にいる人も同じで、自分の意見や企画に自信があると、どうしても通したいと思ってしまう。

しかし、ヒエラルキーの中にいる以上、下手に意見を通そうとすると後々恨みをかってしまったり、よからぬ印象を残してしまったりする。

だから自分の実力がつくまでは、逆らわないというのも戦略の1つになる。そのうえで、代わりにチャンスをとってくれる人を使えばいい。

たとえば同じような内容のおもちゃの企画であっても、全く経験のない人が提案した商品と、過去にヒット作品を持つAさんが提案した商品では、なぜか後者の方が魅力的に見える。

ならば自分の企画をAさんから提案してもらうという「虎の威を借る狐」戦法をとってもいいのではないだろうか。もしその企画が通ったら、プロジェクトの一員に加えてもらえば、自分の経験にもつながる。

未熟者が未熟者でなくなるには、結構な時間がかかる。もしあなたが上司から嫌われているのであれば、好かれるまでにも結構な時間がかかる。であれば、意見を通してくれそうな人に協力してもらう方が賢いと思う。

転職の多い海外では、「この企画を実現するために転職します」というケースもあるだろう。でも日本の場合は、まだ企業の側に、それほどの柔軟性がない。だからやっぱり与えられた場所で活躍する道を模索した方がよいのだ。

もしそのルールがどうしても崩せないのなら、上司に手柄をとらせてあげるといい。「僕の力では企画が通りそうにないので、○○さんから提案してもらえませんか」と上司を立てる。もし本当にいい企画だったら、上司が乗ってくるだろう。

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