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大企業で「イノベーションが起こせない」本質的な理由

2021年10月11日 公開

ケヴィン・ケリー(元『WIRED』創刊編集長)

 

大企業がイノベーションを起こせない本質的な理由

それは会社にも当てはまります。例えばコンピューターの最高のOSを追求しているマイクロソフトのような会社は、ソフトという新しい山に移行するには、いったんいまの最高峰の山を下りないといけません。それを行なうのは大変難しく、できるのはよっぽどマニアックでクレイジーな人です。

ちなみにビル・ゲイツには無理でしたが、スティーブ・ジョブズはそれができましたね。とはいえ、それは非常に難しい話で、成功している会社ほどその移行期には業績が低下してしまうので、破壊的な新しいテクノロジーに移行するのは大変なのです。

企業の規模が大きくなればなるほどイノベーションが難しくなるのは、新しい突破口が見つからないからです。そして端的に言うなら、成功すればするほど完璧さと(効率面での)最適化しか求めなくなるからでしょう。

自分たちがすでに成し遂げてきたことや、プロセスが最適になることを追求するようになるのです。新しい発見のためには、最適化とは反対のことをしなくてはなりません。失敗する可能性が高く、儲けの少ない、小さな市場へと方向転換をしないといけないのです。どう見ても、ビジネス的には悪い環境です。

そして成功して最適化した会社ほど、まるで逆の悪いビジネス環境に向かって行くことには堪えられないのです。その場合、会社のトップは仲間に、スタート地点に立つ他の者と同じような、利益の上がらない、リスクが高い、小さな市場に向かうと、強固な意思を持って宣言しなくてはならないのですから。

例えば、私が今最も注目している「クリーンミート」(人工培養肉)の市場は現在小さく、リスクも高く、何の保証もありません。大きな会社はあえてそれにかける必要はあるでしょうか? 会社自体の舵をそちらに切るということはおそらくないでしょう。

小さな会社にやらせてみて、上手くいけばその会社を買って子会社化して対処しようとするでしょう。大きくて成功しているために、自分たちの力ではこうしたイノベーションを起こせないので、そうするしかないのです。

しかしイノベーションは中央集中型ではなく分散型で、会社の文化に根差したものなんです。ですから会社を買ってもイノベーションは起こせず、それはただソリューションを買っただけです。

そんなことをしても、それはそこに根付いた本来的なものにはならないので、それ以上の革新性は生まれません。ソリューションを買っているのはイノベーションではなく、ただの普通のビジネスです。

 

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