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飲み会が苦痛、プレゼン苦手...生きづらかった「内向型」の人が自分を好きになれたきっかけ

井上ゆかり(内向型カウンセラー)

2024年07月19日 公開

飲み会が苦痛、プレゼン苦手...生きづらかった「内向型」の人が自分を好きになれたきっかけ

現代社会では、外向型の性格の人が優位とされる傾向が強く、内向型の人は生きづらさを感じることが多いのが現状です。

今年5月に『世界一やさしい内向型の教科書』(世界文化社)を出版した井上ゆかりさんも内向型で、モヤモヤを抱えてきた一人。今は内向型カウンセラーとしてご活躍されていますが、内向型ならではの悩みをどのように克服してきたのでしょうか。井上さんは、まず自分が内向型であることを受容することが大切だと語ります。詳しく教えていただきました。

 

内向型と外向型の違い

内向型と外向型で最も違う点は、時間の使い方のバランスです。内向型は静かな人ではなく"静かな時間を求める人"。対して外向型の人は、"賑やかな時間を求める人"と私は定義しています。

分かりやすく例を挙げるなら、「ひどく疲れた時や落ち込んだ時に、どういう過ごし方をするのが好きか」という質問に対して、外向型は誰かとワイワイ過ごしたり、アクティブにストレス発散することを思い浮かべます。逆に、そのようなシチュエーションで内向型は、1人きりで特に何かするわけでもなく家や落ち着ける場所で過ごしたいと感じます。

内向型は「静かな時間がないと無理」というような必然性の高さが特徴です。

静かな時間というのは、1人行動という意味に限定されません。心を許した信頼できる相手と過ごすことも静かな時間のうちに入ります。

そのため、どんな人と繋がっていたいのか、誰と一緒にいる時間が作れたら嬉しいのか、1人や2人だけでも十分なので考えておくと良いと思います。それはオンライン上の繋がりだって良いのです。それぞれが心地よく感じる「静かな時間」を過ごせることが大切です。

 

外向型が優位の社会

現状、外向型が良しとされる風潮が世の中では一般的ではないでしょうか。子どもの頃から私たちは学校で「常に元気で明るく、みんな仲良し」であることが良いと教えられます。社会人になってからは、職場で会議やプレゼンの受け答えの速さが求められたり、交流を深めるための飲み会などへの参加も余儀なくされます。

外向型=優秀という刷り込みが、内向型の人の「もっと変わらなきゃ」という生きづらい感覚を増幅させているように思います。

しかし、外向型優位の社会の変化を待っても、そう簡単には変わらないでしょう。それより自分がどうありたいのか、どういう働き方がしたいのかなど自分の内側に意識を向けて、ご自身なりの生きやすい環境を築いていってください。

最近では、それぞれが抱える"心の問題"や"生きづらさ"にスポットが当たりやすくなってきています。内向型について知ってもらう機会も増えているので、少しずつ理解が広まっていくといいなと願っています。

 

コンプレックスも裏返せば強みに

世界一やさしい内向型の教科書

内向型をコンプレックスに感じてしまう方は多いかもしれません。しかし、どんなコンプレックスにも言えますが、裏を返したら強みになることは多分にあると思います。

例えば、内向型の人は会議やコミュニケーションの場面で、突発的に発言をするのは苦手かもしれません。一方で、じっくり考えられる性格のおかげで、ご自身にしかできない質の高いアウトプットができるはずです。

また、内向型の人は喋ることより、テキストコミュニケーションに向いています。チャットやメールなど、ある程度自分で考える時間を持って進行する仕事が得意です。

コロナ以降、リモートワークも普通になり、テキストコミュニケーションの大切さが浮き彫りになりました。その点では、テキストのやり取りが丁寧にできる内向型の人が働きやすい環境も整ってきていると言えます。

働き方に悩んでいる内向型の人は、リモートワークができないか相談したり、環境を変える余地がないかアンテナを張ってみるのも良いと思います。

 

内向型として抱えてきた生きづらさ

私も自分が内向型であることで生きづらさを感じてきました。初めての大きな挫折は、著書でも詳しく書いていますが、学生時代の就職活動でした。「周りの就活生のようにならないと」と無理して外向型になろうとしていました。当時のことは今でも私の中で大きなトピックとして残っています。

それまでの学生生活は、写真を見ても友達に囲まれて楽しそうに見えます。とても恵まれていた反面、友人たちの輪の中にいるときに勝手に後ろめたさを感じていたことも思い出します。自分から何かを話すわけでもなく、仕切り役をするわけでもない自分と一緒にいて、みんな楽しいのだろうかと考えていました。

一対一での会話は、どちらが話すかが分かりやすく、自分のペースで空気感を作れるので良かったのですが、大人数になると自意識過剰になっていました。自分が話しているときに他の人が飽きていないか、私ばかり話しすぎていないか、と考えすぎてしまうのです。友達と解散した後に一人反省会を開くこともしょっちゅうでした。

内向型カウンセラーの活動を始めてからは、自分と向き合う時間が増え、関わる方々のおかげで自分自身の理解がどんどん深まりました。活動を通して、自分の強みや、どういう人間でありたいのかを考え続けることの大切さを実感しました。

不安なときほど答えを出さなければならないと思い込んでいましたが、それは違っていました。生きていく過程で考え続けることこそが、自分への理解を深める手立てだったのです。

また、自己受容ができるようになったことも大きな変化です。「内向型の自分も悪くない」と自分の内面を受け入れることで変化に向かっていけると実感しています。

 

内向型カウンセリングのその後

これまで私にご相談いただいた方の一例を挙げますと、ネガティブな感情に振り回され、同じことで悩み続けていた方がいらっしゃいました。その方はカウンセリングを通じて客観的に感情を受け止められるようになり、気づけば自分で心をケアできるようになっていました。

また、私の過去の本を読んで働き方を変えたいとご相談に来てくださった方は、働き方を見直す中で副業を始めて会社員もお辞めになった後、じつは私と一緒に仕事をしてくれているんです。その方の変化の過程を見てきたのですが、今はもう助けてもらうような存在です。

<取材,執筆: PHPオンライン編集部・片平奈々子>

著者紹介

井上ゆかり(いのうえ・ゆかり)

内向型カウンセラー

自身が20年間コンプレックスを感じていた内向性を受け入れられるようになった経験と独自の分析力をもとに、2018年からSNSなどで「内向型を直さず活かす生き方」を発信。これまでに内向型コミュニティの主宰や講演、カウンセリングセッションなどを行う。その後活動の幅を広げ、まじめながんばり屋さんが自分にやさしくなれる手帳「pure life diary」の開発や、モヤモヤを軽くするセルフケアノート講座を主宰。これらの活動を経て、約1万人の内向型の方と関わってきた。

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