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神戸事件と滝善三郎の切腹〜明治新政府初の外交問題

2018年01月11日 公開

歴史街道編集部

神戸事件発生の地碑
神戸事件発生地の石碑
 

備前藩兵と外国人水兵が衝突。神戸事件が起こる

今日は何の日 慶応4年1月11日

慶応4年1月11日(1868年2月4日)、神戸三宮神社前において、備前岡山藩兵と外国人水兵が衝突する事件が起こりました。明治政府初の外交問題として、「神戸事件」とよばれます。

前年の慶応3年12月、岡山藩は西宮警衛の朝命を受け、家老の池田伊勢、及び同じく家老の日置帯刀(へきたてわき)が2000の兵を率いて1月5日に出立しました。池田が若年であったため、兵の指揮は主に日置が担います。日置の側近が、馬廻役の滝善三郎正信でした。は荻野流砲術家であった父に砲術を学び、また小野派一刀流の槍術も極めていたといいます。この時も、藩兵の砲兵隊を率いていました。

1月11日昼過ぎ、藩兵の隊列が西国街道を三宮神社近くに差し掛かった時のこと。開港したばかりの兵庫には、外国軍艦が碇泊し、多数の外国人が日本人(岡山藩)の隊列を見物しようと道沿いに集まっていました。突如、建物から出てきたフランス人水兵2人が、行列の前を横切り始めます。これは当時の武士たちにすれば、許されざる無礼な行為でした。砲兵隊長の滝は行列の前に出て、2人を制止しますが、彼らが強引に渡ろうとするため、やむなく手にしていた槍で腰に軽傷を負わせます。負傷した水兵は逃げ出しますが、もう一人の水兵や周囲にいた水兵も拳銃を取り出したため、滝は隊列に注意を促すべく「鉄砲」と叫びます。すると藩士たちは、発砲の号令と勘違いして一斉射撃を行なったといいます。

が、これにはやや疑問を感じます。砲兵隊長の「鉄砲」という言葉だけでいきなり射撃命令となるのか、また一斉射撃の弾丸は悉く外国人の頭上高くを越えており、これは威嚇射撃を命じられていたと思われるからです。 しかし弾丸がはるか頭上を越えていても、外国人は日本人が銃口を向けたと受け取りました。見物の外国人の中にはイギリス公使パークスもおり、事態に激昂。居留地守備の各国の兵士が集まってきて、銃撃戦となります。しかし外国人を射殺してしまえばどうなるか、6年前の生麦事件と薩英戦争の顛末は滝たち備前藩士も知っていたのでしょう。本格的な衝突はせずに、銃を収めました。

小競り合いの結果は、見習い水兵と別の外国人の2人が軽傷を負っただけで済みましたが、事件を重く見た列強側は6カ国の公使連名で政府にねじ込みました。「死者が出なかったのは神の恩寵であり、殺意が明らかである以上、発砲を命じた士官の死罪を求め」たのです。これを受けて政府は2月2日、「砲兵隊長の滝善三郎の死罪、隊の責任者である日置帯刀の謹慎」を命じました。本来であれば、日置が責任を取るべき立場であったのかもしれませんが、一説に、藩が日置を失うことを惜しみ、滝に因果を含めたともいわれます。また藩主・池田茂政が、滝に対し「馬前の討死に勝る忠臣」と称え、「国家のため、藩のため、帯刀のために頼む」と声をかけたともいわれます。これが事実であれば、滝は割り切れない思いはあるにせよ、武士の面目だけは保ったのかもしれません。

滝の切腹は2月9日夜、兵庫の永福寺で、内外検証人の面前で行なわれました。政府側からは伊藤俊輔(博文)、中島作太郎(信行)、列強側は米英仏蘭伊普の士官、公使館書記が参集しています。アーネスト・サトウの『一外交官の見た明治維新』には次のように記されています。

「滝は仏壇の前の赤い毛氈の上に座ったが、きわめて平静で前方へ倒れ伏すのに都合の良い位置を選んだ。白木の台に乗せられた短刀を受け取るや滝は、やや乱れた声ではあったが "二月四日神戸で逃げんとする外国人に対し不法にも発砲を命じたのは自分だ。その罪で切腹するから見届けてほしい" と述べ、できるだけ深く刺して右のわき腹までぐいと引いた」

善三郎、享年32。国許に妻と4歳の長男、2歳の長女を残しての最期でした。滝はその一命をもって、神戸を列強の爪牙から守ったのです。 なお滝の切腹から6日後、堺において土佐藩士がフランス水兵と衝突する堺事件が起きることになります。

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