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岡田以蔵~暗殺剣を振るった「人斬り以蔵」の実像

2018年01月20日 公開

歴史街道編集部

人斬り
 

人斬り以蔵・岡田以蔵が生まれる

今日は何の日 天保9年1月20日

天保9年1月20日(1838年2月14日)、岡田以蔵が生まれました。幕末の土佐郷士で、「人斬り以蔵」の異名で知られます。かつてのNHK大河ドラマ「龍馬伝」では佐藤健さんが演じていました。

最近はあまり見かけなくなりましたが、少し前まで、岡田以蔵の写真として紹介される肖像がありました。福沢諭吉の隣に立つ物静かな雰囲気を感じさせる人物の名は「岡田井蔵」。井蔵は以蔵の当て字であろうと思われたのでしょう。しかし実際は全くの別人で、この人物は幕臣の岡田井蔵(せいぞう)でした。幕府の軍艦操練所の教授を務め、咸臨丸の乗組員の一人です。そもそも福沢とともに写る写真はサンフランシスコで撮影されたもので、そこに「人斬り以蔵」がいるはずもありません。

さて、幕末には後世、「人斬り」と呼ばれた男が4人いました。薩摩の田中新兵衛、中村半次郎、肥後の河上彦斎、そして岡田以蔵です。 坂本龍馬とつながりがあって、龍馬に頼まれて勝海舟の護衛をしたりしているためか、4人の人斬りの中で以蔵は小説やドラマに取り上げられる機会が多いように感じます。とはいえ、そのイメージの多くは司馬遼太郎氏の『人斬り以蔵』に拠っているといえるでしょう。

土佐郷士よりも身分の低い足軽の極貧の家に生まれ、学もなく、師匠の武市半平太の使用人のようなかたちで、武市に気に入られたいがため人を斬ったという人物像です。しかし実際は郷士の家であり、まったくの無学でもなかったようです。剣は武市に手ほどきを受け、その後、江戸に出て、鏡心明智流桃井道場で中伝を得たとされます。

武市が土佐勤王党を率いて、参政・吉田東洋暗殺に踏み切った時に、武市に従っていた以蔵の生涯も決まったのかもしれません。武市が土佐藩の藩政に関わるようになり、京都で他藩応接役に任じられると、「天誅」と称する尊王攘夷派による佐幕派人物の暗殺が始まります。その暗殺者の一人が以蔵でした。ただ、以蔵のみが暗殺者であったわけではありません。 当時は血気にはやる者たちが、頻繁に暗殺騒ぎを起こしていました。あの初代総理大臣の伊藤博文も同じ頃、暗殺に手を染めています。時代の狂気というべきでしょうか。

しかし、武市が肩で京の風を切り、以蔵が暗殺剣を振るったのは1年程度。 前藩主・山内容堂が、武市ら土佐勤王党の台頭に強い不快感を示して処罰を始め、さらに文久3年(1863)8月、会津藩と薩摩藩による8月18日の政変で尊王攘夷派の長州藩が京都より失脚すると、容堂は勤王党の大弾圧に踏み切って、武市を国許に投獄しました。

京に潜伏していた以蔵が土佐藩に捕縛されたのは、元治元年(1864)6月頃のこと。国許に送還された以蔵は、身分が低いこともあって苛烈な拷問にかけられました。土佐勤王党による吉田東洋暗殺の自白を迫られたのです。 以蔵は痛みに泣き喚き、すぐに自白をしてしまいました。別の説では口は割らなかったものの、以蔵に不安を覚えた武市が毒殺を図ったことを知り、その裏切りに憤激して自白したともいいます。どちらが真実かは、わかりません。いずれにせよ、以蔵の自白によって土佐勤王党の主要メンバーは断罪され、勤王党は壊滅しました。

慶応元年(1865)5月11日、以蔵は斬首の刑に処されました。享年28。 辞世の句は「君がため 尽くす心は水の泡 消えにし後ぞ 澄み渡るべき」 この句をみても、以蔵が無学で粗暴なだけの男とは思えませんし、武市たちに対してなにがしかの思いを抱いていたようにも感じられます。

以蔵の自白から勤王党のメンバーが処刑されたこともあって、維新後、土佐の殉難志士として以蔵が顕彰されることはありませんでした。 「人斬り」という後世貼られたテロリストのレッテルの重さもあるのかもしれませんが、一面的な見方だけで人間を評価できるものなのかどうか。客観的にとらえることも必要なのかもしれません。


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