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情夫にするなら彰義隊~上野戦争に散る

2018年05月15日 公開

歴史街道編集部

彰義隊の墓(上野恩賜公園)
彰義隊の墓(上野恩賜公園/東京都台東区)
 

今日は何の日 慶応4年5月15日
上野戦争、彰義隊が壊滅 

慶応4年5月15日 (1868年7月4日)、現在の東京都台東区の上野公園周辺で、彰義隊と新政府軍が戦う上野戦争が起こりました。1日の戦いで彰義隊が壊滅したことで知られます。旧暦の5月15日のことですが、もう夏の季節であったとは少々意外な気がするかもしれません。

慶応4年1月の鳥羽伏見の戦いに敗れた前将軍徳川慶喜は江戸に戻り、恭順の意を示し、上野の寛永寺に謹慎しました。しかしそれをよしとしない旧幕臣や一橋家の家臣らが中心となり、結成されたのが彰義隊です。彰義とは「大義を彰(あき)らかにする」の意で、徳川慶喜の助命と復権を目指し、新政府軍がそれを認めないのであれば、戦うことも辞さずという集団でした。

頭取には渋沢成一郎(渋沢栄一のいとこ)、副頭取に天野八郎が選出されました。二人とも代々の幕臣ではなく、農民や庄屋から幕臣や一橋家家臣になった者たちです。その噂を聞きつけて、旧幕臣だけでなく侠客なども次々と加わり、彰義隊は千名を超える規模となりました。

4月3日には拠点を浅草の東本願寺から寛永寺に移します。 旧幕府としては、彼らが慶喜恭順の妨げとなり、江戸に入りつつあった新政府軍から敵軍とみなされることを怖れました。そこで彼らを江戸の治安を守る市中取締まりの任にあて、新政府に敵対するものではないと見せようとします。

4月11日に江戸城無血開城。寛永寺に謹慎していた徳川慶喜も水戸に移りました。すると頭取の渋沢成一郎は、日光に赴くことを主張して強引な軍資金集めをしたため、副頭取の天野八郎と対立、渋沢は脱退して埼玉で新たに振武軍を組織します。

慶喜が寛永寺を去った後も彰義隊は、日光輪王寺宮公現法親王と徳川家霊廟を守護する名目で寛永寺に留まり、江戸市中警備を行ないます。すでに市中に入っている新政府軍兵士と小競り合いになることはしばしばで、彼らの錦の袖章を奪っては「錦(キン)ギレを取った」と喜びました。

一説に彰義隊士は浅黄色の羽織に白い義経袴、朱鞘の刀を差し、髪は「講武所風」に結っていたといわれ、そのいでたちに憧れて入る者も少なくなかったとか。吉原でも遊女たちが「情夫(いろ)にするなら彰義隊」と歓迎し、江戸っ子たちに大人気でした。

旧寛永寺・黒門
上野戦争の激戦を今に伝える旧寛永寺・黒門
(東京都荒川区・円通寺)

しかしこれに業を煮やした新政府は、彰義隊を市中取締まりにあてる旧幕府(中心は勝海舟)の措置に理解を示していた西郷吉之助に代わり、大村益次郎を軍防事務局判事に任命。解散命令に従わない彰義隊に対し、大村は5月15日、武力討伐に踏み切ります。大村は寛永寺の三方に兵を配置し、根岸方面を敵の逃走経路としてわざと開けた上で、午前6時30分頃、雨の中、正門の黒門口(広小路周辺)、側門の団子坂方面、背面の谷中門に攻めかかりました。

とはいえ当時の寛永寺は現在の上野公園一帯が敷地であり、極めて広大です。周囲には八門(黒門、新黒門、穴稲荷門、清水門、車坂門、屏風坂門、谷中門、新門)があり、当日の戦闘では正面の黒門の攻防が激烈を極めますが、新政府軍はなかなか突破できません。その一因として、山王台(現在、西郷隆盛の銅像が建つ付近)からの正確な砲撃を受けていたからだといわれます。

山王台に陣を敷いたのは、彰義隊支援に加わった関宿藩卍(萬字)隊でした。 山王台からの砲撃で死傷者が続出することに新政府軍はあわてますが、方針を変えて山王台に兵力を集中して、卍隊を敗走させます。一方、団子坂方面では長州勢が新式のスナイドル銃に慣れておらず、やむなく戦線を離れてしばらく練習するという椿事も起きました。

その後、加賀藩邸(現在の東京大学構内)に設置したアームストロング砲が、不忍池を越えて寛永寺に着弾するようになり、混乱の中、薩摩藩兵が中心となって黒門口を突破。さらに団子坂方面から長州藩兵らがなだれ込み、夕刻には彰義隊は敗走しました。

現在、上野公園には彰義隊の墓があります。場所は西郷隆盛像の後方で、墓石には彰義隊の文字がはばかられたため、「戦死之墓」とだけ刻まれています。山岡鉄舟の筆によるものです。


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