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STP分析を正しく説明できるか? 今さら聞けない「マーケティングの原則」

庭山一郎(シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役)

 

マーケティングの戦いは、プロの職人の世界

どんな世界でも、アマチュアはプロに勝てません。もし勝てるとすれば、本質的にプロの技量が不要な状況のときだけでしょう。例えば、ゴルフのオンラインゲームならばアマチュアがプロゴルファーを倒すことがあるかもしれませんが、実際のコースに出てしまえば、アマチュアがプロに勝てる見込みはほとんど無いはずです。

世界のBtoBマーケティングは、20年前にプロ職人の世界になりました。米国でCMOの平均在任期間が2年を切ったと話題になったのは2010年のことです。米国・ニューヨークでBtoBマーケティング専門のヘッドハンターをしている友人は次のように話してくれました。

「ROMI(Return On Marketing Investment:マーケティングの投資利益率)の目標を2年連続で達成したCMOは、ほぼ例外なく良い条件でヘッドハントされる。2年連続で落としたCMOは、ほとんど解雇される。だから真剣勝負だし、優秀な人は3年に2回のペースで転職を重ねてキャリアアップしている」

まさに、現在のBtoBマーケティングは「包丁一本さらしに巻いて」の職人の世界です。では、日本企業はどうするべきなのでしょうか?

企業経営者はマーケティングのプロフェッショナルを育成するか、外部からプロを引っ張ってくるか、プロ集団と契約するか、あるいはそれらを組み合わせて組織を作るか、いずれかを選択しなければなりません。

プロを育成するには時間とお金がかかります。良い環境と指導者を用意しなければ育成できないからです。外部から経験豊かなプロを招請する、あるいはプロ集団と期間限定で契約する意味はここにあります。

内部での育成を待つ余裕が無いなら信頼できるプロ集団と契約し、アウトソーシングを中心に組織を構築するしかないでしょう。その場合でも社内にカウンターが必要ですから、1~2人のマーケティング人材の育成は必須です。プロ集団と契約するにはもちろんお金も必要ですが、今の日本では、絶対数の少ない腕の確かなプロ集団を探す方が難しいかもしれません。

いずれにしても経営者が決断し、予算を確保し、アクションを起こさなければなりません。でなければ日本企業はマーケティングの貧困が理由で競争力を落とし続けることになるでしょう。アマチュアでも何とかなった時代は終わったのです。

 

【庭山一郎(にわやま・いちろう)】
1962年生まれ、中央大学卒。1990年にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。
1997年よりB2Bにフォーカスした日本初のマーケティングアウトソーシング事業を開始。製造業、IT、建設業、サービス業、流通業など各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティングサービスを提供している。海外のマーケティングオートメーションベンダーやB2Bマーケティングエージェンシーとの交流も深く、長年にわたって世界最先端のマーケティングを日本に紹介している。
年間で150回以上に及ぶセミナー講師や、ノヤン先生として執筆している『マーケティングキャンパス』等、多数のマーケティングメディアの連載をとおして、実践に基づいたマーケティング手法やノウハウを、企業内で奮闘するマーケターに向けて発信している。ライフワークとして、ブナの植林活動など「森の再生」に取り組む。

 

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