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猪子寿之が語る スティーブ・ジョブズの言葉

2015年08月06日 公開

猪子寿之(チームラボ代表)

なぜ、ジョブズは禅に魅かれたのか?

 

 生前、ジョブズは京都を何度も訪れるなど、禅に深く傾倒していたと言われています。それも人間そのものを変えようとしたことと関係していると思います。

 西洋では、モノは自分の外にある存在であり、観察の対象であると捉えます。しかし、禅においては、自分は世界と一体であると考える。山の中で修行するのも、自分は山の一部であると感じるためです。

 ジョブズはこの考え方に強く関心を持ったのだろうと思います。なぜなら、彼が作っているモノは拡張された人間の一部だからです。人間の外にあるモノではないのです。

 まさにこの思想に基づいて、ジョブズは製品を作っています。駅の券売機のタッチパネルは、人間の外側にあるモノと感じられるでしょう。自分の外にある対象物を、指先で押して操作する。それに対して、同じタッチパネルでも、iPhoneを操作していると、iPhoneと自分とが一体になっているような感覚が得られます。

 

クレイジーと言われても信念を持ち続けた

 

 こうしたジョブズの考え方やそれに基づいた振る舞いが、他人からはクレイジーにも見えたのでしょう。

 1997年にアップルに復帰したときに、ジョブズが同社のテレビCMで世に放ったのが「Here's to the crazy ones.」で始まるコピーでした。

 たぶん、彼自身は自分がクレイジーだとは思っていなかったと思います。むしろ、「自分は真っ当で、人類を前進させるために頑張っている。それなのに、気がついたら自分が興した会社を追い出されたり、人格を非難されたりする……」と、寂しい思いをしていたのではないでしょうか。そのときに、「人類を前に進めた偉大な人たちは、みんなクレイジーだと言われてきたんだ」と、自分への「慰み」として、このコピーが出てきたのではないかと思います。

 ジョブズは、デジタル領域とネットワークが人類を変えるとピュアに信じていた。だから、クレイジーだと言われようと、成功できたのです。

 

「クレイジーな人たちが人類を前進させた」
と宣言したアップルの広告コピー

Here's to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers. The round pegs in the square holes. The ones who see things differently. They're not fond of rules. And they have no respect for the status quo. You can quote them, disagree with them, glorify or vilify them. About the only thing you can't do is ignore them. Because they change things. They push the human race forward. While some may see them as the crazy ones, we see genius. Because the people who are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do.

クレイジーな人たちがいる。はみ出し者、反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。四角い穴に 丸い杭を打ち込むように、物事をまるで違う目で見る人たち。彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。彼らの言葉に心を打たれる人がいる。反対する人も 賞賛する人も、けなす人もいる。しかし、彼らを無視することは誰にもできない。なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。彼らは人類を前進させた。彼らはクレイジーと言われるが、私たちは天才だと思う。自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから。


 ジョブズがアップルに復帰した直後の「Think different」キャンペーンで、テレビCMに使われたコピー。猪子氏は、「ちょっと変わった、息苦しそうにしている若い人」に、このCMを見せることがあるという。
「社会の倫理観とか道徳からずれていてもいいんだよ、と。人類を前に進めようとして頑張っていても、理解されなかったり、バカにされたりするときもある。そんなときに、この言葉で憂鬱から脱しなさい、ということです」(猪子氏)

 

スティーブ・ジョブズ(1955~2011)

米国生まれ。1976年、スティーブ・ウォズニアックとともにアップルを創業。『マッキントッシュ』などを世に送り出すが、85年に同社を追放される。その後、NeXTの創業、ピクサーのCEOを経て、97年にアップルに復帰。98年、『iMac』を発売してヒットさせる。2000年、アップルCEOに就任。同年、『iTunes』と『iPod』で音楽事業を開始。07年、『iPhone 』を発表。11年、がんのためCEOを退任。

チームラボのホームページはこちら

《取材・構成:川端隆人 写真撮影:稲垣純也》

《『THE21』2015年6月号より》

著者紹介

猪子寿之(いのこ・としゆき)

チームラボ代表

1977年、徳島県生まれ。2001年、東京大学卒業と同時にチームラボを創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。チームラボは、プログラマ、エンジニア、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者など、スペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート、サイエンス、テクノロジーの境界線を曖昧にしながら活動中。

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