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徹底的にモノを厳選する「持たない」整理術

2015年11月24日 公開
2023年03月31日 更新

安藤美冬(〔株〕スプリー代表取締役社長/「自分をつくる学校」学長)

「いつか使うかも」というものは捨てる

安藤氏の「厳選重視」の原点は、かつてオフィスで働いていたころにさかのぼる。

「当時は、出先で問い合わせを受けたときに『デスクまで戻らないとわからない』状況をしばしば経験しました。部の共有資料などはとくに、オフィスに戻って確認するしかありません。不便を感じつつも、仕方ないと思っていました」

これは紙ベースの情報管理が主流だった時代ならではの不便さだったが、現在はデータで情報管理できるようになった。

「必要な情報にいつでもどこでもアクセスできるということは、すべての仕事道具が『ポータブルになる』ことを意味します。さらに言えば、すべての仕事道具をポータブルに『する』こと、つまり量を減らすことが、より迅速かつフレキシブルな対応力の源となるのです」

そう考えるようになり、改めて一般的なオフィス環境には無駄を感じることが多いという。

「引き出しの中にほとんど見ない資料が眠っていたり、デスクの上に書類が積み重なっていたり。それらの大部分が不要なモノです。捨ててしまえば、作業のたびに書類の山を押しのけてスペースを作ったり、あちこち探し物をしたり、といった無駄な動線をカットできます」

不要なモノを捨てると、「身体の動線」と同時に「視線の動線」も単純化できる。

「目に入る情報が多すぎると、頭の中にも余計な情報が入り込みます。これは集中力の減退とストレスの増大を招きます。逆に、視界をスッキリさせると頭が整理され、仕事のスピードも上がります。毎日同じデスクで事をするオフィスワーカーの方々にこそ、ぜひこの感覚を味わっていただきたいですね」

モノを減らす際は、次の「三原則」を心得ることが必要だ。

「一つは、前述のとおりデジタル化です。撮影やスキャンで紙データを少しでも減らすこと。
二つ目は、再び入手可能なものは手放すこと。『いつか使うかも』はモノが増えるもとですから。
そして三つ目は、会社や部門で共有できるものは共有し、個人では持たないこと。これに関しては周囲に提案していくことも重要です」

 

月一回のソーシャル整理を

スリムアップを実践する際には、いくつかのコツが要る。

「第一歩を踏み出すのが大変なときは、自分だけのきっかけを作ると良いでしょう。たとえば私は毎月一日を『ソーシャル整理デー』と決めて、活用していないアプリや、不要な画像などを削除しています。こうしたタイミングを設け、定期的に行なうことで習慣がつき、リバウンドも防げます。
捨てる前に数値目標を決めるのも良いと思います。『紙類の3割を手放す』『45リットルのゴミ袋2枚を一杯にする』など、数字にしてみるとよりイメージしやすくなります」

さらに、この姿勢を維持していくために収納量そのものを減らそう、と勧める。

「出張に四十五リットルのキャリーケースを使っている方は、三十リットルにサイズダウンしてみましょう。不要な持ち物は除外するしかない状況をあえて作るのです」

限界を設けることは、自分の中にある要・不要の基準を明確化することにもつながる。

「無駄をギリギリまでそぎ落とす作業は『必要か否か』という自問自答のくり返しです。それにより価値観の自覚が促され、ひいては決断力も鍛えられるでしょう。モノの用途や意味をきちんと考えられれば、仕事上の選択においても意識が変わるのではないでしょうか」

 

洋服はオールシーズンで30着に厳選

安藤氏の「モノを厳選する生活」は自宅でも徹底されている。デスク上はほとんど何も置かれていない状態。本棚も、半分は雑貨の飾り棚にしている。

「書籍の収納に使うのは3段のみ、それ以上に漏れ出たらそのつど処分します」

衣類も、全種類・オールシーズン合わせて30着。このきわめて少ない数にも根拠があるという。

「100着の服があるとしても、着回しのローテーションに随時入るのは正味3割。ならば残りの7割は不要だと考えました」

このとき、「いつか着るかも」などと考えずに思い切って手放すのは、一種の『練習』だと安藤氏は語る。

「身の回りの品でも、一つひとつが自分の価値観を知る素材。これらを妥協なく厳選することで、確かな基準を確立できます。今後人生で重要な選択を迫られたときにも、はっきりと物事を見極められるでしょう」

 

 

《『THE21』2015年11月号より》

著者紹介

安藤美冬(あんどう・みふゆ)

株式会社スプリー代表

1980年生まれ。慶應義塾大学卒業後、㈱集英社を経て独立。『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』オフィシャルサポーター、講談社『ミスiD(アイドル)』選考委員、雑誌『DRESS』の『女の内閣』働き方担当相などを務めるほか、大学講師、コラムニスト、コメンテーターとしても活躍。著書に、『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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