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頭が活性化する!「思考のプロ」の情報整理術

2015年12月01日 公開

山口 周(ヘイグループ ディレクター)

集めた情報は見直してどんどん削除する

紙はストックしないのが山口流。雑誌や新聞記事、メモなど、紙の情報で気になるものがあれば、写真に撮ってEvernoteに次々に放り込んでいる。

「Evernoteに入っているのは自分で一度スクリーニングした情報ばかりなので、読み返すのは楽しいですよ。あまり重要でない会議に出席しなくてはならないときなど、こっそり読んでいることもあります。

 ただ、読み返したときにつまらないと感じる情報もあります。そうした情報が混じっているのは、情報感度や自分の関心に耳を傾ける傾聴力が鈍くなっているときに情報収集したからでしょう。そのような状態で収集した情報はノイズに過ぎません。ストックした情報の純度を下げてしまうだけなので、読み返したときにどんどん削除することにしています。

 情報の接し方には、二つの態度があります。一つは、何でもかんでも玉石混交でストックして、必要なものを必要なときに取り出すというグーグル検索的な態度です。仕事するうえではグーグル的な態度も役に立つでしょう。

ただ、私はそれよりも、純度の高い情報が並ぶ空間を散歩するような感覚で情報に接したい。そのほうがより良い知的生産につながるからです。

すぐに役立つ情報は、すぐに陳腐化してしまいます。知的生産に必要なのは、すぐ役に立つとはかぎらないが、なぜか自分の心にさざ波が立った情報です。そうした情報が何かの瞬間に化学反応を起こして、新しい発想が生まれます。

化学反応が起きやすいように、ストックした情報をときどき見直して、純度を高めておく必要があるのです」

 

情報収集のアンテナは広げすぎてはいけない

情報整理のコツはわかったが、それ以前の情報収集では何に気をつければいいだろうか。

「軍事では『戦力の逐次分散投入は愚策』といわれますが、情報収集も同じでしょう。アンテナを広げすぎると注意力が分散されて、何も見ていないのと同じ状態になってしまいます。

ですから情報収集のときには一定の方向に注意力のフォーカスを当てて、その他は遮断することを意識したほうがいいと思います。

私がそのことを強く感じたのは、電通の大先輩、白土謙二さんとユニクロの店内を歩いたときです。私はお客さんが大勢いるなと思った程度でしたが、白土さんは『このままではユニクロは危ない』と指摘しました。当

時、ユニクロの売上は男性ものが六~七割。しかし、店内の顧客は女性が七割でした。その様子を見て、『男女の割合が逆転しているのは、女性が夫や子供の服を買っているから。顧客が自分の欲しいものを買わない洋服店は、そのうち限界がくる』と予測したのです。

白土さんはそのことを柳井さんに進言して評価されましたが、私はまったく同じものを見ていながら、女性が多いことに気づかなかった。これは私の注意力が分散していたからです。

情報を見るときは、やはり視点を絞りこんだほうがいい。それでこそ、みんなが気づかないことに気づけるのです」

 

「イケス式情報整理術」のポイント

頭の中に情報を死蔵するのではなく、イケスのように生きたままストックして、必要なときに自由にアクセスするのが、山口氏提唱のイケス式情報整理術。その手順とは?

①気になる箇所にアンダーラインを引く。対象になるのは、後で参照することになりそうな「事実」、共感する、あるいは納得できない「洞察」、有効だと思える、あるいは思えない「行動」の三つ。

②アンダーラインを引いた箇所をイケス(エバーノートなど)に転記。気になったものすべてを転記するのは作業負荷が大きいので、上限は一冊につき9カ所まで。

③イケスの中を見直してフレッシュな状態を保つ。いったん放り込んだ情報も、本当は不要だったり、すぐ陳腐化することがある。それらは定期的にメンテナンスして削除する。イケスの中の鮮度を保ってこそ、知的生産の役に立つ!

 

 

《『THE21』2015年11月号より》

著者紹介

山口 周(やまぐち・しゅう)

独立研究者

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー・ヘイグループ参画を経て独立。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(光文社新書)『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)などベストセラー多数。

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