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世界の誰よりも早いロボットタクシーの事業化を目指す

2016年01月25日 公開

谷口 恒(ZMP社長)

【連載 経営トップの挑戦】 第3回
〔株〕ZMP代表取締役社長  谷口 恒

 

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、ドライバーのいない自動運転タクシーを実現させる。そんな大きな夢に向かって、政府のあと押しも受けながら突き進んでいるのが、ロボットタクシー社だ。同社はZMPとDeNAの合弁会社。カギとなる自動運転技術を担うのがZMPである。自動運転といえば、日米欧の自動車メーカーが開発にしのぎを削っている技術。その中で、ベンチャーであるZMPはどのような戦略を取っているのか。勝算はあるのか。ZMPの創業社長であり、ロボットタクシー社の会長も務める谷口恒氏にうかがった。

 

ヒト型ロボットでやれることはやり切った

 

 ――まず、ZMPを起業された経緯をお教えください。

谷口 私は、メーカーと商社を経て、1999年にインターネットの会社を創業したのですが、翌年にITバブルが崩壊しました。会社への影響はほとんどなかったものの、「これからどうしようか」と思っているときに出会ったのがロボットでした。

 取引先の方が文部科学省所管の科学技術振興機構の技術参与になられたので、そこでロボットを研究しているのを見に行ったんです。2足歩行をするものの、まだ頼りない感じではあったのですが、「ロボットには可能性があるな」と思いました。

 2000年はロボットが世の中に出始めた頃で、人びとがその未来に心をときめかせていました。大きな夢があったのです。ソニーがAIBOを発売したり、ヒト型ロボットを開発したりしていて、ホンダもASIMOを開発していた。自分も、そんな大手企業がやっている事業に参加したい、という想いもありました。そこで、ロボット開発会社のZMPを設立したのです。

 ――具体的に、ロボットでどういうビジネスをしようと思われていたのですか?

谷口 初めの頃はあまり考えていませんでした。『PINO』(右写真)という高さ70cmの2足歩行ロボットを作ったのですが、そういうロボットは珍しいということで、イベントへの出演依頼が来たんですね。そこへキャスティングして、出演料をいただいていました。芸能事務所みたいな仕事ですね(笑)。アルバイトに手伝ってもらいながら1人でやっていたので、出演料の金額設定も自分で考えて決めていました。テレビCMに出演することもありましたし、宇多田ヒカルさんの『Can you keep a secret?』のミュージックビデオに出演したこともあります。

 そうしているうちに、だんだんお金が入るようになって、人も採用できるようになりました。そこで、技術者を採用して、自分たちでロボットを開発することにしました。それまでの、技術移転を受けて製品化していたロボットは、すぐに壊れてしまっていたんです。

 ――科学技術振興機構からの技術移転ですか?

谷口 そうです。移転を受けたのは研究段階の技術だったので、それを自分たちで高めていくことにしたわけです。目指したのは、家庭用のヒト型ロボットで一番乗りをすること。家庭用ロボットとしては、それまでにもAIBOがありましたが、ヒト型はありませんでしたから。

 ――家庭用というのは何をするのでしょうか? 家事とか?

谷口 いやいや。今でも家事ができるロボットはないですよね。ヒト型ロボットを量産する、というだけです。やったのは、家庭で買える値段にすること。当時、高いノートパソコンが30万円くらいでしたから、それくらいに抑えることを目標にしました。コストを下げるために、モーターの数を減らしました。モーターの数を減らすと、大きなものは作れないので、小さくなります。小さくなりすぎるとまた高くなるので、40㎝くらいの大きさに落ち着きました。また、量産するにはお金がかかるので、ベンチャーキャピタルからの出資を受け入れました。そうして2004年に発売したのが『nuvo』(右写真)です。結局、58万8,000円になってしまいましたが。

 高くなった要因は、ほぼすべての部品が世の中になく、自ら特注品を作ったからです。また、目がカメラになっていて、携帯電話でアクセスをすると、その映像を見ながら遠隔操作できるようにもしました。この技術はNTTドコモさんと共同開発したもので、特許も持っています。

 発売すると、最初は勢いよく売れました。でも、どんどん鈍化していく。値段が高いですからね。では、頑張って40万円にしたら売れるかといえば、そんなことはないだろうと思いました。というのは、ヒト型ロボットには、機能が「面白さ」以外にないからです。

 ――言ってしまえば、おもちゃにすぎない、ということですか。

谷口 おもちゃとしても、乱暴に扱うと壊れてしまうし、高価ですから、どうかな、と。

 発売することによって、ユーザーの要望を聞けるのではないかという期待もありました。それを機能として製品に搭載することを考えていたのです。しかし、出てくる要望は、それこそ「家事をしてほしい」といったものばかりで、現実的ではない。ユーザーの期待と実際にできることとのギャップがあまりに大きすぎました。そこで、在庫は売り切って、次の量産はしないことにしたのです。

 ヒト型ロボットに対する期待と実際にできることのギャップは、今でも当時とほとんど変わっていません。多少変わったのは、音声認識の性能や画像認識がよくなったくらい。でも、それは入力インターフェイスの1つにすぎなくて、ヒト型ロボットとして、歩行する、手で何か仕事をする、などの技術ではないですよね。家庭用の歩くヒト型ロボットは、ZMPが出して以来、どこも出していません。

 

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著者紹介

谷口 恒(たにぐち・ひさし)

〔株〕ZMP代表取締役社長

兵庫県生まれ。大学卒業後、エンジニアとして制御機器メーカーで商業車のアンチロックブレーキシステムの開発に携わる。その後、商社の技術営業、ネットコンテンツ会社の起業を経て、2001年、〔株〕ZMPを設立。01年に研究開発用2足歩行ロボット『PINO』、04年に家庭向け2足歩行ロボット『nuvo』、07年に自律移動する音楽ロボット『miuro』を発売。08年から自動車分野へ進出し、09年、自動運転技術開発プラットフォーム『RoboCarシリーズ』を発売。15年、〔株〕ディー・エヌ・エーとの合弁会社ロボットタクシー〔株〕を設立。同年、ソニーモバイルコミュニケーションズ〔株〕との合弁会社エアロセンス〔株〕を設立。

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