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声に「スーツ」を着せれば、会話は一気に盛り上がる

2016年05月21日 公開
2023年05月16日 更新

魚住りえ(フリーアナウンサー)

 

口角を上げるだけで声が心地よく響く

 一方、雑談の際には「適度なカジュアルさ」も忘れてはならない、と魚住氏。

「あまりにハキハキ話しては、かえって不自然ですよね。声を出すのは、ボールを投げるようなもの。軽い会話では、軽くボールを投げるべき。大きすぎない声量を心がけましょう」

 とはいえ、声量や声のトーンを抑えて話すと、暗い印象を与えることにはならないだろうか。

「そこで大事なのが、常に口角を上げることです。口角を上げると、笑顔になるだけでなく、声も明るくなり、決して沈んだ印象にはなりません。

 口角を上げると、滑舌もよくなります。舌の位置が上がり、舌の先が口の中で浮いた状態になるので、発音しやすくなるのです。ラ行などはとくに明瞭になりますね。

 頬の筋肉が鍛えられて、小顔になるのも隠れたメリットです(笑)」

 滑舌がよくなることを活かして、さらなる印象アップを図ることもできる。

「1音ずつ丁寧に、最後まで発音することを心がけてください。『ありがとうございました』というひと言を一気に発するのではなく、1音1音を頭に浮かべながら口にすると、感謝の気持ちが明確に伝わります。『承知いたしました』『よろしくお願いいたします』『お疲れさまでした』なども同様です」

 魚住氏は普段の生活の中でもあらゆる場面でこれを実践し、その効果を感じている。

「コンビニでお釣りを渡されたときなどに、1音ずつ意識して『ありがとう』と言うと、店員さんの表情がパッと輝きます。すると、店員さんの『ありがとうございました』も、決まり文句ではない、血の通ったものになります。発音1つでコミュニケーションは大きく変わるのだ、と実感させられます」

 和やかに雑談をして、場が十分に温まったら、本題に入る。そのタイミングを作るうえでは、上手に緩急をつけるのがコツだという。

「ある敏腕営業マンのお話によると、いざ本題に入るときや、相手に印象づけたい言葉を発するときには、わざと声量を下げて、3秒くらい間を置くそうです。内緒話のように語り出すことで、相手の集中力が上がり、こちらへの注目度が増します。早口で話していたならスピードを落とす、高いトーンで話していたなら低くする、というのもいいですね。こうして声に変化をつけることで場面を切り替えられます」

 

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著者紹介

魚住りえ(うおずみ・りえ)

フリーアナウンサー

大阪府生まれ、広島県育ち。1995年、慶應義塾大学卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。2004年に独立し、ドキュメンタリー番組『ソロモン流』(テレビ東京系列)のナレーションなど、500本を超える作品に携わる。現在はボイスデザイナー・スピーチデザイナーとして、「魚住式スピーチメソッド」に基づく話し方の指導も行なっている。著書に『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』(東洋経済新報社)がある。

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