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知っておきたい「大人のアレルギー」対処法

2016年06月24日 公開
2023年05月16日 更新

斎藤博久(国立成育医療研究センター副研究所長/日本アレルギー学会理事長)

アトピー性皮膚炎の薬は十分な量を

成人のアトピー性皮膚炎は症度によっても異なりますが、治療法のガイドラインをしっかりと順守してケアをすれば、ほぼ症状が現われない状態にまで回復する人が実は多くを占めます。

外用薬を塗布する際は、少ない量を薄くのばすのではなく、十分な量を塗布するよう心掛けましょう。薬を人差し指の先端から第一関節まで押し出した約0.5g分を「1フィンガー」とすると、胸から腹部全体に塗るには約5フィンガー分が必要です。それを皮膚の上に置いていき、手のひら全体で力を入れずに広げていきます。

皮膚が赤くただれた状態でも、これを守って塗布すれば、一週間程度で肌がきれいになってきます。症状の改善が見えたら、医師と相談しながら塗布する回数を減らしていけば良いのです。炎症が治まるとすぐに治療をやめてしまう人が多いのですが、完治は難しいので、医師と相談して根気強く治療しましょう。

 

ダニとハウスダストをなるべく除去しよう

食物アレルギーの場合は、アレルゲンとなる食材を避けることが基本ですが、ダニとハウスダストの除去も重要です。アレルゲンは大気中に絶えず飛散していますし、ダニは食物を含むすべてのアレルギーの元となるからです。

ピーナッツバターの消費量が多いアメリカの家庭のハウスダスト量に含まれるピーナッツ抗原を調査した結果、平均100μg(マイクログラム)でした。アトピー性皮膚炎がある子供では16μg超過でピーナッツアレルギー になることがわかっていますから、食事制限だけでは食物アレルギーは予防できない、というのが現実なのです。

ケアしていない布団からホコリ1gを吸引すると、ダニ抗原が三十μg検出されるといわれています。10μgでダニアレルギーの症状が出てくるので、週に一度は布団を天日干しした後に掃除機をかけましょう。さらにダニが通過できない布団カバーを使えば、ダニは激減します。

ダニとハウスダストの除去は、気管支ぜんそくにも効果を発揮します。同時に、吸入ステロイド薬も用いて下さい。吸入ステロイド薬は普通のステロイド薬と違って、鼻や気管支の粘膜に留まり全身には移行しにくいので、ほぼ副作用が出ずに炎症を抑えることができます。

花粉症の予防は、抗ヒスタミン薬をお勧めします。病院で処方されるものはもちろん、薬局で売っているものの中にもありますので、薬剤師に相談するなど成分を確かめてみてください。抗ヒスタミン薬は成分が脳に移行しづらいため眠くならず、副作用がほとんどありません。

ポイントは、花粉飛散の2週間くらい前、1月下旬頃から飲み始めること。花粉症の症状が出始めてからでは効きづらい薬なので、症状が出る前に飲み始めるほうが、軽いままですみます。

最近ではアレルゲンを含んだエキスを舌下にたらし耐性をつける「舌下免疫療法」も広まっています。毎日薬を飲まなくても数年間、症状が抑えられるため、症状がひどく困っている方は選択肢の一つとして考えてみてもいいかもしれません。

 

 

アレルギーに負けない生活術

(1) 住環境を整える
代表的なアレルゲンとなるのがハウスダスト、ダニ、カビ。これらを除くことがアレルギー改善には重要となる。
・寝具を良く干し、しまうときに掃除機をかける
・ペットを室内で飼わない
・畳やカーテンは定期的に手入れする
・換気を心がける
・エアコンのフィルターを掃除する
・室内で喫煙しない
・ぬいぐるみはときどき洗濯をする
・こまめに掃除をする

(2) 食生活の改善
食べ物がアレルゲンであっても、必ずしもそれを避けることが必要なわけでない。まずは食生活の改善で、食物アレルギー対策を。
・食品添加物のあるものを避ける
・動物性たんぱく質、脂肪を摂りすぎない
・栄養のバランスを心がける
・新鮮な食材を摂る

※食生活の改善は一般的には良いとされていますが、科学的にアレルギーに対して効果が実証されているわけではありません。

 

 

<『THE21』2016年6月号より>

 

著者紹介

斎藤博久(さいとう・ひろひさ)

国立成育医療研究センター副研究所長/(一社)日本アレルギー学会理事長

1952年、埼玉県生まれ。77年、東京慈恵医科大学卒業。国立相模原病院小児科医長を経て、96年より国立成育医療センター研究所・免疫アレルギー研究部部長、2010年より同副研究所長。13年より日本アレルギー学会理事長。東京慈恵医科大学、東邦大学、東北大学などの小児科客員教授を兼任。米国アレルギー学会評議員、日本小児アレルギー学会理事なども務める。著書に、『アレルギーはなぜ起こるか』(講談社ブルーバックス)、『Q&Aでよくわかるアレルギーのしくみ』(技術評論社)などがある。

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