THE21 » トピックス » 意外すぎる!? なぜか成長率が高い5つの国

意外すぎる!? なぜか成長率が高い5つの国

2016年06月15日 公開

広田幸紀(国際協力機構〈JICA〉チーフエコノミスト)

 

第2位 トルクメニスタン 10.322% 

 経済データが非公開のため、利用可能な統計数値にバラつきが見られる国です。GDPの約半分、輸出の9割、歳入の8割強を天然ガスと原油関連が占めています。資源価格の高騰が追い風になり1999~2008年の10年間と2011~14年の4年間という長期にわたって2桁成長を続けましたが、2015年には資源価格下落の影響を大きく受けました。

 現在、天然ガスの輸出先の多様化のため、インドやEUへとつながるパイプライン建設をそれぞれ推進しているとともに、ガス化学や化学肥料、ガス火力による電力輸出など、天然ガスを活用した産業の育成にも注力しています。これらのプラントの建設は日本企業数社も受注しています。

 

第3位 コンゴ民主共和国 9.170% 

 長年紛争が続き、2013年にようやく主な反政府勢力であるM23を駆逐したものの、現在も東部では武力紛争が続いています。その東部で産出される鉱物資源が、経済成長を支えています。銅の生産は世界6位、コバルトは世界の約半分を産出している他、ダイヤモンドや金も採れます。国営の鉱山会社6社と、近年では中国やカザフスタンなどの新興国を含む外国企業との合弁などにより、開発が行なわれています。

 ただ、世界の銅の半分を消費していた中国の景気が減速しているため、銅の価格は下落しており、2014年初めと2015年末を比べると3割以上も下がっています。そのため、調査機関の中には2016年の経済成長率は5.0%に低下すると予測するところもあるようです。

 

第4位 パプアニューギニア 8.540% 

 銅、金、石油、天然ガスなどの資源に恵まれた国です。それにより1人当たり所得は2,232ドルと比較的高く、中所得国に分類されます。本格的な高成長に入ったのは2007年。資源価格の高騰と資源開発のための建設が要因です。2014年5月には年産690万トンのLNG(液化天然ガス)の輸出が始まり、2015年は通年の生産となるので、高い経済成長率が続きます。輸出先は日本、中国などです。2016年以降は高成長はひと段落しますが、2017年にはさらに大規模な年産800万トンのLNG事業の建設開始も見込まれています。

 とはいえ、現在、財政はキャッシュ不足に直面している状態。天然ガス価格下落に加えて、販売収入が借入れの返済などに回されるため直ちには政府の歳入増につながらず、今年2月には公務員給与の支払いの遅れや停止が発生しました。

 

第5位 ミャンマー 8.456% 

 新政権が成立したことで注目を集めている国ですが、実は、欧米による経済制裁下の1999年から9年間、2桁成長を遂げていました。中国との貿易拡大もありましたが、隣国タイへの天然ガスの輸出が主な要因です。

 現在は、内外からの民間投資が増加していることが成長要因。建設業に加えて通信業、観光業なども伸びています。1989年からの外国投資額累計は、約4分の1を占める中国が1位。タイ、シンガポールが続きます。製造業の受け入れのために経済特区の開発も進めており、昨年9月に開業したティワラ経済特区は日本が官民を挙げて開発したものです。

 洪水や中国経済減速の影響で2015年の成長率はやや低下する見込みですが、その後は再び高成長が続くと見られています。

 

《『THE21』2016年6月号より》

著者紹介

広田幸紀(ひろた・こうき)

独立行政法人 国際協力機構(JICA) チーフエコノミスト

1958年、北海道生まれ。経済学博士。旧国際協力銀行ハノイ、ジャカルタ首席駐在員、開発第一部長、JICA東南アジア・大洋州部長、企画部長などを歴任し、2015年より現職。埼玉大学客員教授。

THE21 購入

2024年5月号

THE21 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

仏作って魂入れず(トルクメニスタン)

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(8)石澤義裕(デザイナー)

やってはいけない!「海外旅行のタブー」

千葉千枝子(観光ジャーナリスト)
×