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【今週の「気になる本」】『謎のアジア納豆』

2016年06月07日 公開

高野秀行著/新潮社

「納豆は日本人のもの」と考えるおこがましさ

 職業柄、良質な紀行文やノンフィクションを読むと、「採算が取れているのか?」と勝手に心配になる。ここ数年でそれを最も感じたのが『謎の独立国家ソマリランド』。治安が悪すぎてガードマンなしで国に入ることができず、しかもその代金が結構高く、ガードマン代だけでどう見ても印税を超えている。読んでいてなんだか申し訳なくなる1冊だった。

 もちろん、それだけ取材が綿密ということであり、「採算取れてるの?」は私の中で、「才能の無駄使い」と並んで最高の褒め言葉だ。で、その言葉を久々に捧げたくなった1冊が本書。

 東南アジアの内陸部に数々の「納豆的な食べ物(大豆の発酵食品)」があることに気づいた著者が、その正体を解明するため、何度も何度も、それこそ取材費が心配になるほど現地に通い詰めるルポルタージュ。タイの山奥、ミャンマーの少数民族の村、ネパールの奥地……。その結果見えてきたのは、地域ごとに本当に様々な納豆文化があること。むしろ日本のものよりバラエティに富んでさえいて、そのことに嫉妬すら覚える。

 嫉妬を感じるのは、日本人が納豆を「日本独自のもの」と考えている証だろう。外国人に食べさせてその反応を喜ぶ「お約束」もその表れ。だが、そうした考えすべてが偏狭なナショナリズムなのではないか。そんなことに気づかせてくれる良質の紀行だ。


執筆:THE21編集部 Y村(「紀行」担当)



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