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情報を頭に「なじませる」ことで必要なものが見えてくる

2016年09月02日 公開
2023年05月16日 更新

生方正也(HRデザインスタジオ代表)

因果関係の整理は出来事の時系列に注目

次は情報を「切り分ける」段階です。いくつかの要素を大くくりで分け、抜け漏れのない状態になっているかを確認します。
問題は、「どう分けるか」です。事実関係のレポートならば5W1H、状況分析なら「顧客ニーズ・自社の特徴・競合の動向」などの分類がよく使われますが、個々の事例は千差万別ですから、分け方にも絶対の正解があるわけではありません。

これには試行錯誤を繰り返すしかありませんが、ヒントになるのは「レベル感」です。
たとえば、ある国についてのレポートで、①経済情勢、②社会情勢、③直近の国政選挙の結果、と分けた場合、③だけが極端に細かい話題になっていてアンバランス。ここは「政治情勢」とするのが正しい、とわかります。このように要素同士を見比べて、レベルがそろっているかどうかを随時確認しましょう。

また、物事の「因果関係」を整理するときは、できるだけ具体的な事象同士を結びつけること。たとえば「職場のコミュニケーションが足りない」と「雰囲気が悪い」という二つの情報は双方とも抽象的で、どちらが原因かも判然としません。ここは調査を重ねて具体的な出来事を多く引き出し、その時系列を確認しましょう。前に起きた出来事のほうに原因がある、という判断もつきやすくなるので、より確実です。

「フォルダ分け」は不要。「検索のしやすさ」が第一

集めた情報の管理に関しては、やはりデジタルベースがおすすめです。アナログならファイリングや分類を厳密に行なう必要がありますが、デジタルは検索ひとつで膨大な情報から必要なものを見つけ出せます。
逆に言えば、デジタルではフォルダをきちんと分ける、といった作業に時間を使わないこと。細かく分類しなくても、検索しやすいツールに保管し、検索しやすいワードやタグをつけておくことのほうが重要です。
私の場合、テキストデータはアウトラインプロセッサにすべて入れています。それ以外の画像やPDFは、エバーノートで管理。紙ベースの情報も、PDFにして入れておきます。
こうすれば調べ終わった情報も万全に管理できます。次に調べものをする際も、参考資料としてすぐ活用できるでしょう。
 

 

《『THE21』2016年8月号より》

著者紹介

生方正也(うぶかた・まさや)

HRデザインスタジオ代表

1968年、埼玉県生まれ。東京大学文学部卒業。日産自動車〔株〕にて、取引先部品メーカーの経営分析・指導を担当。〔株〕ウィリアム・エム・マーサー(現・マーサージャパン〔株〕)にて、人事制度改革、組織変革などのコンサルティングに従事したのち、グロービスを経て独立。現在は、人材開発、組織変革に関するコンサルティングに携わると同時に、ロジカルシンキング、情報活用術、仮説思考などの分野の指導、著作活動を行なっている。著書に『アウトプットの精度を爆発的に高める「思考の整理」全技術』(かんき出版)、『アウトプットの質を高める 仮説検証力』(すばる舎)、『ビジネススクールで身につける仮説思考と分析力』(日本経済新聞出版社)、『シナリオ構想力 実践講座』(ファーストプレス)、『結果を出す人がやっている「思考整理」の習慣』(日本実業出版社)など多数。

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