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「経営戦略史」で必ず知っておくべき8人(確立篇)

2016年07月22日 公開
2022年12月08日 更新

三谷宏治(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)

「番長」バーニーがその後の流れを変えた

一方、ケイパビリティ派の大物がジェイ・バーニー。マンガ版では私のお気に入りのキャラで、「チャンピオン」ポーターに対して、「ケイパビリティ派の番長」として、学ランを着て葉っぱをくわえています(笑)。

定量的分析を重視し、「SWOT分析」「5力分析」といったさまざまな分析ツールを生み出してきたポジショニング派に対して、ケイパビリティ派は「企業活動は人間的側面が重く定性的議論しかなじまない」としていました。バーニーは、そこに統計分析的な手法を持ち込みました。その理論は未完成な部分が多々ありましたが、多くの学者に影響を与え、次の経営戦略論につながっていきました。

ただこうやって、経営戦略論に一本の「流れ」を示すことができたのは、一九九五年くらいまで。それ以降のさまざまな経営戦略論は、多くが同時並行的に進むようになっています。それもあってマンガ版では1995年までとそれ以降で分け、テイラー、メイヨーからポーター、バーニーまでを「確立篇」、その後現われた経営理論を「革新篇」としました。経営戦略の基礎知識を教養として押さえたいなら「確立篇」、今のトレンドを把握したいなら「革新篇」。どちらから読んでも大丈夫です。

その4
ジェイ・バーニー(1954 - )

ケイパビリティ派の大家。イェール大学で博士号取得後、UCLAにて教鞭を取る。
ポジショニング派は「儲かる位置取り」が重要だというが、ではなぜ、同じ業界でも企業間で収益などのパフォーマンスの違いが現われるのか。バーニーはその理由を企業の「資源」によると主張。その判断基準として「経済価値」「希少性」「模倣困難性」「組織」の4つを挙げ、これはVRIOフレームワークと呼ばれることになった。成功例として挙げたデルが数年後にピンチを迎えるなど、論としては未完成の部分も多かったが、のちの研究者に大きな影響を与えた。

(後編・革新篇に続く)

(『THE21』2016年7月号より)

著者紹介

三谷宏治(みたに・こうじ)

K.I.T.〔金沢工業大学〕虎ノ門大学院教授

1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、外資系コンサルティング会社に就職。以来19年半、ボストンコンサルティング グループ、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEAD(仏フォンテーヌブロー校)で経営学修士(MBA)修了。
仕事と並行して28歳頃から社会人教育に携わり始め、32歳からグロービスで「経営戦略」などの講師を務める。06年から教育の世界に転じ、地元小学校でのPTA会長などを経て、07年からK.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授を務める。同時に、「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマにした授業や講演で全国を飛び回る。年間7,000人以上の社会人・子ども・保護者・教員に接している。現在K.I.T. 虎ノ門大学院教授の他に、早稲田大学ビジネススクール客員教授、グロービス経営大学院 客員教授、放課後NPOアフタースクール 理事、NPO法人3keys理事、永平寺ふるさと大使を務める。

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