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棚橋弘至の「全力」お悩み道場2~緊張するのは、意欲の裏返しだ!

2016年09月08日 公開
2023年05月16日 更新

棚橋弘至(プロレスラー)

緊張に飲みこまれないための裏ワザを伝授

新日本プロレスをV字回復させた「100年に一人の逸材」・棚橋弘至。何事にも全力で組織をも変えた、その生き様は従来のプロレスファンのみならず、さまざまな人から支持されている。この企画では読者の皆さんからお寄せいただいたお悩みに、棚橋選手がお答えする。《取材・構成=村上敬、写真撮影=永井浩》

 

人前でうまく話すには?

Q1.私はあがり性で、人前に出るのが苦手です。どうしたら緊張せずに、落ち着いて人前で話ができるようになるでしょうか?

 

まず前提として、緊張してもいいんじゃないでしょうか。緊張するのは、物事を成功させたいという気持ちの裏返しです。僕もビッグマッチの前は緊張感でいっぱいになります。逆にまったく緊張しないとしたら、責任感や向上心に欠けているのかもしれない。だから、緊張していることを恥じる必要はまったくないですよ!

緊張して困るのは、余計な力が入って普段の力を出せなくなることがあるからでしょう。でも、そこで「緊張しちゃいけない」と思うとさらに力が入ってガチガチになってしまう。最初に言ったように、「緊張するのは気持ちが前向きになっている証拠だ」と考えて緊張そのものを受け入れてあげれば、肩の力もスッと抜けるのではないでしょうか。

人前に出ると緊張するなら、そのことを正直に話せばいいんです。「すみません、いまパニックになって目が泳いでいます!」と笑いにすれば、自分もまわりも気分がほぐれてリラックスできます。緊張していることを明かしたって、それで評価が下がることはないですよ。むしろ「あいつは正直なやつだ」と応援してもらえることのほうが多いと思います。

緊張に飲みこまれないようにするには、場数を踏むことも大切です。実は、僕は昔から赤面症で、人前で話すことが大嫌いでした。でも、プロレスラーになると、そうも言っていられません。リング上ではマイクアピールしなくてはいけないし、試合以外でも、こうして雑誌のインタビューを受けたり、テレビやラジオ番組のゲストに呼んでいただいたりして、何かと話す機会が多いんです。最初はもちろんヘタでした。でも、場数をこなすうちに少なくても緊張で真っ白になることはなくなった。要は慣れです。

場数を踏めないときはどうするか? 僕ならイメージトレーニングしますね。背中を鍛えるとき、僕はハイフライフローという技で飛ぶ姿を思い描きます。そうするときれいな筋肉になるからです。人前で話すのも同じ。架空の聴衆をイメージしながら練習すると、場数を踏むのと同じ効果が得られるはずです。

上手に話すコツについても、僕が実践しているテクニックをいくつか伝授しましょう。

大学の先輩である芸人のユリオカ超特Qさんに教えてもらったのが、大きな声でゆっくりと話すこと。早口のほうが話はうまいと思われがちですが、プロはむしろ相手に一つひとつの言葉がきちんと届くようにゆっくり話すそうです。それを聞いていろんなラジオ番組で確かめてみましたが、たしかに、上手なMCさんほどゆっくり話していました。僕も早速、自分のポッドキャスト放送でマネさせてもらっています。

あと、荒ワザですが、相手の質問に正面から答えないというテクも効果的です。相手に予想外の質問を振られて、思わず言葉に詰まってしまうことってありますよね。これを避けるには、あらかじめ自分が言いたいことを三つくらい決めておき、質問を無視して話しちゃえばいい。

たとえば試合後のインタビューで「今日は激闘でしたね」とふられても、それには触れずに「次の挑戦者は……」と好きなことを言う。そう決めておけば、いきなり想定外のことを聞かれたらどうしようという不安もなくなります。

ここで注意したいのは、質問を無視することと、聞いている相手のことを考えないことは違うということです。話す内容はあらかじめ決めておくけど、その内容は聞いている人に合わせて準備しておく。それが基本です。
 

僕は小学校で子供たちに講演することもあれば、企業の管理職の方を前にお話しすることもあります。企業の方には、新日本プロレスをどうやって現場から立て直したのかという話をするのですが、小学生の前で同じ話をしたら変ですよね。

子供に話をするときは、なるべく低年齢の子に合わせて、掴みで仮面ライダーの話をします。僕、歴代のライダーの名前を全部言えるんです。それを最初に披露すると、子供たちも集中力を持って聞いてくれる。その印象が強すぎるのか、「今日は仮面ライダーにくわしいお兄ちゃんが来た」と言われちゃいますが(笑)。
 あとは、自分の体験談を挟むことも意識しています。言っていることがいくら正しくても、抽象的だと相手の心に響きにくい。それよりも、「自分のときはこうだった」と伝えたほうが聞き手に身近に受け取ってもらえます。いま僕が講演の話をしたのも、まさにそれ。ノウハウだけを並べるより、リアルな体験で補ったほうがずっと説得力が出て伝わると思います。

 

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著者紹介

棚橋弘至(たなはし・ひろし)

プロレスラー/新日本プロレス所属

1976年、岐阜県生まれ。98年、入門テストに合格。99年、立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入門。同年デビュー。2003年、初代U-30王者。06年、IWGPヘビー級王座を初戴冠。09年、11年プロレス大賞MVP。14年、第7代IWGPインターコンチネンタル王者に。第45代、47代、50代、52代、56代、58代、61代IWGPヘビー級王者。著書に、『全力で生きる技術』(飛鳥新社)など。

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