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棚橋弘至の「全力」お悩み道場6~諦めた夢も、無駄じゃない

2016年11月08日 公開
2023年05月16日 更新

棚橋弘至(プロレスラー)

「声優になりたい」という娘の夢を応援すべきか?

Q2 中学生の娘が、声優になるために専門の学校に通いたいと言っています。しかし声優になるのはかなり狭き門のようです。親として彼女の夢を応援すべきか、それとも現実を教えるべきか、どうしたらいいでしょうか。

 

今度は逆に、夢があるけどどうしよう、というお悩みですか。これは簡単です。お子さんが夢を持っているなら、全力でそれを応援してあげてください。夢を無理に持たせる必要はありませんが、あきらめさせる必要はもっとない。たとえ困難な夢でも、それを応援して支えてあげるのが親の務めです。

プロの声優は競争率が高いから、失敗するんじゃないか、と心配する気持ちはわかります。でも、失敗したらしたでいいんです。夢に向かって全力で取り組んだ経験は、絶対に無駄になりません。仮にその夢が破れても、また別の夢と新たに出会って前に進めるはずです。

逆に無理にあきらめさせると、「夢を持っても無意味」「本気になっても誰も応援してくれない」というネガティブな記憶が残り、挑戦しない大人に育つかもしれません。そうならないためにも、親の応援が必要なのです。

僕がプロレスラーになると言ったとき、父はいいとも悪いとも言いませんでした。上京するとき岐阜羽島の駅で「やるなら日本一になれ」と言っただけです。でも、このひと言がとても支えになった。

2009年、僕は東スポのプロレス大賞MVPを初めていただきました。受賞の連絡をもらい、真っ先に岐阜の父に連絡ました。ところが父は、「今、仕事中だから後にしろ」とつれない返事。思わず「あんたが日本一になれって言ったんじゃん!」とツッコミを入れてしまいました(笑)。

父は本当に忙しかったのか、それとも照れ隠しでつれなくしたのか、よくわかりません。どちらにしても、僕は父のひと言があったから頑張れた。これは確かです。

親としては、せめて高校や大学は出てほしいという気持ちもあるでしょう。僕が大学3年で入門テストに受かったとき、長州さんは「レスラーはケガが多く、一生続けられるかどうかわからない。1年待つから卒業してからこい」と言ってくれました。同じように、お子さんに「高校に通いながら声優の勉強をしてみては」とリスクの少ない選択肢を示してあげるのもいいでしょう。どちらにしても大切なのは、親が味方になってあげること。それが親の愛情の示し方だと思います。

 

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著者紹介

棚橋弘至(たなはし・ひろし)

プロレスラー/新日本プロレス所属

1976年、岐阜県生まれ。98年、入門テストに合格。99年、立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入門。同年デビュー。2003年、初代U-30王者。06年、IWGPヘビー級王座を初戴冠。09年、11年プロレス大賞MVP。14年、第7代IWGPインターコンチネンタル王者に。第45代、47代、50代、52代、56代、58代、61代IWGPヘビー級王者。著書に、『全力で生きる技術』(飛鳥新社)など。

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