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「胃腸の不調」を放置すると、こんな深刻な病気に!

2016年09月11日 公開
2023年05月16日 更新

江田 証(医学博士)

 

ピロリ菌は、胃がんの原因になるだけではありません。胃粘膜が荒れてカルシウムの吸収力が減少するため、骨粗鬆症のリスクも高めます。

さらに、パーキンソン病や糖尿病が改善しづらくなりますし、認知症になる確率は、なんと非感染者の2倍になります。ピロリ菌とこれらの病気との因果関係は長らくわかっていなかったのですが、最新の研究で、ピロリ菌が持つ「cagA(キャグエー)」という毒素が関係していることがわかりました。

ピロリ菌が胃粘膜細胞にcagAを送り込むと、胃粘膜細胞から胃の外の血管内にcagAが分泌され、血流に乗って全身を循環し、血管や臓器や脳に動脈硬化をはじめとする害をおよぼすのです。

 ですから、検査をしてピロリ菌に感染していることがわかったら、除去することが不可欠。40代は、その最後のチャンスです。ここを逃せば病気が発症するリスクが一気に高まります。

ぜひ、医師の診察を受け、ピロリ菌感染の有無と胃粘膜の状態を確認してください。

 

小腸のパワーダウンが大腸の病気を招く

次に腸についてお話しすると、年齢に伴う最も顕著な変化は、小腸の吸収力の低下です。

本来なら、食物の栄養分は小腸でほとんど吸収され、大腸に届くときにはほぼゼロになっています。ところが、小腸の吸収力が弱くなると栄養分が残ったまま大腸に届いてしまいます。すると、大腸内が富栄養化して、腸内細菌に異常な変化が起こります。それが糖尿病や動脈硬化を招く要因となります。また、肝臓がんの原因となる二次胆汁酸を生み出すアリアケ菌という腸内細菌も増殖します。

がんや動脈硬化といった病変が目に見える「器質性」の病気だけでなく、見た目には異常が出ない「機能性」の病気も、年齢とともに増えてきます。

その一つが過敏性腸症候群。頻繁に腹痛が起こり、便秘や下痢を繰り返す厄介な症状ですが、検査をしても目で見てわかる異常は見つかりません。そのため、病院に行っても「とくに異常はありません」のひと言ですまされてしまうことがありますが、もちろん、過敏性腸症候群も立派な病気です。主にストレスが原因で起こり、都会暮らしの人、多忙な人、高い役職に就いている人などに多く発症する傾向があります。

仕事やプライベートでの責任が重くなっていく40代。そのプレッシャーも、腸の「見えざる敵」と言えるでしょう。

 

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著者紹介

江田 証(えだ・あかし)

医学博士

1971 年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒業。ピロリ菌に感染した胃粘膜で胃がん発生に重要な役割を果たすCDX2遺伝子が発現していることを、米国消化器病学会において世界で初めて発表。自身が院長を務める医療法人社団信証会江田クリニックでは、国内外から訪れる1 日200 人もの人々の胃カメラ・大腸カメラ検査、診療を行なっている。『一流の男だけが持っている「強い胃腸」の作り方』(大和書房)他、著書多数。

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