ホーム » THE21 » トピックス » 【今週の「気になる本」】『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』

【今週の「気になる本」】『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』

2016年09月14日 公開

柴 那典著/太田出版

「電子の歌姫」は、突然、誕生したのではない

 タイトルのように「世界」を変えたのかはともかく、初音ミクが日本の音楽シーンに大きな影響を与えたことは事実でしょう。確かにkz(livetune)やryo(supercell)、米津玄師といったボカロP出身のミュージシャンたちが商業音楽でも活躍し、『千本桜』などのボカロ曲がカラオケランキング上位の定番になっている。本書ではこの現象を、元ロッキング・オン社の編集者である著者が、音楽史上に位置づけてくれています。

 本書では何度も「ある日突然、『電子の歌姫』が誕生して、未曽有の現象を引き起こしたわけではない」と繰り返されます。そして、そのことは初音ミクのキャラクターデザインを見てもわかる、と指摘します。左腕の模様はヤマハのシンセサイザー『DX100』(1985年発売。『DX7』〈1983年発売〉の廉価版)だし、髪の色はそのインジケータのボタンの色だし、スカートにはMIDI端子が描かれている。つまり、80年代にシンセサイザーなどが普及したことによってDTM(デスクトップミュージック)が盛んになったことの記憶が、初音ミクの姿には刻み込まれているのです。

 著者は、さらにヒッピー文化が栄えた1967年まで遡り、また初音ミクが商業音楽化されていく頃まで時代を下って、初音ミクを生んだキーマンやボカロPなど関係者たちへのインタビューを豊富に交えながら、初音ミクについて論じます。私は音楽に疎いので、非常に勉強になりました。そして、「なんだかよくわからない」と思っていた現象が、自分が生きているのと同時代に、同じ世界で起きている現象であるという、当然と言えば当然のことに、少し実感がわきました。今まで持っていなかった視点を与えてくれるのが本の大きな役割だと、改めて感じた次第です。

 

執筆:S.K(「人文・社会」担当)



関連記事

編集部のおすすめ

【今週の「気になる本」】『Discover Japan』

2016年 3月号/枻出版社

【今週の「気になる本」】『王とサーカス』

米澤穂信著/東京創元社

【今週の「気になる本」】『七時間半』

獅子文六著/ちくま文庫

<連載>今週の「気になる本」

THE21編集部

日本最大級の癒しイベント出展社募集中

アクセスランキング

  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする
日本最大級の癒しイベント出展社募集中

話題のビジネス・スキルをやさしく解説するとともに、第一線で活躍しているビジネスパーソンの
プロのノウハウを紹介するなど、「いますぐ使える仕事術」が満載されています。