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日本一乗りたいローカル線「五能線」の現場力

2016年09月12日 公開
2023年05月16日 更新

遠藤功(ローランド・ベルガー日本法人会長)

南欧の港町を思わせる沿線の町とは?


海沿いを走るだけに、自然環境は厳しい(写真提供:JR東日本秋田支社)。

そのために必要なこと、それは地元の魅力を「再発見」するという視点だ。

「どんな絶景もユニークな文化も、それを毎日見ている地元の人にとっては日常に過ぎず、そのすごさに気づかないものです。たとえば、五能線沿線に深浦という美しい町があります。まるでスペインやポルトガルの漁港を思わせる雰囲気のある町で、太宰治の泊まった宿もある。私も世界のいろいろな町を見てきましたが、こんな町が日本にあったのかと驚きました。老後は本気で深浦に移住したいとすら思っているほどです。

日本にはまだ、こうした土地がいくらでもあるはず。地元の人は観光客が来て初めて『実はすごかったのか』と再発見する。すると、地元に対するプライドが生まれる。このサイクルをいかに生み出すかが、日本全体にとって重要だと思います」

また、仕事で逆境にさらされている人たちにもぜひ、五能線に乗り、「五能線の奇跡」を体感してもらいたいという。

「そもそも、五能線ほど逆境だらけのローカル線はありません。海沿いだから風は強いし、冬は地吹雪にもなる。沿線は過疎化が進み、乗客も少ない。首都圏からも遠い。でも、JR東日本秋田支社の人たちは『手間がかかる子供ほどかわいい』という感じで、みな、五能線のことを語り出すと止まらない。

ポイントは諦めないこと、そして当事者意識を持つこと。それさえあれば、『地方にあるから』『規模が小さいから』『規制が厳しいから』という逆境はいくらでも跳ね返せるはず。ぜひ、五能線に乗って素晴らしい景色を楽しむとともに、そんな彼らの現場力を感じてもらいたいと思います」

(『THE21』2016年8月号より)

著者紹介

遠藤 功(えんどう・いさお)

遠藤功(ローランド・ベルガー日本法人会長)

ローランド・ベルガー日本法人会長。早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現職。経営コンサルタントとして、戦略策定のみならず実行支援を伴った「結果の出る」コンサルティングとして高い評価を得ている。ローランド・ベルガーワールドワイドのスーパーバイザリーボード(経営監査委員会)アジア初のメンバーに選出された。株式会社良品計画 社外取締役。ヤマハ発動機株式会社 社外監査役。損保ジャパン日本興亜ホールディングス株式会社 社外取締役。日新製鋼株式会社 社外取締役。コープさっぽろ有識者理事。『現場力を鍛える』『見える化』(以上、東洋経済新報社)、『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)など、ベストセラー著書多数。

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